7月19日(土)


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サロンで朝食をとる.オレンジジュースは pressé とうたうだけあっておいしい.大陸式ながらジャムの種類は豊富.小さな宿だけれどドーバー海峡両岸の高級紙,le Figaro と the Guardian が備えられている.

9時過ぎに宿を出て,サンルイ島近くの駅まで地下鉄で.かつての暮しの手帖読者として,サンルイ島とシテ島ははずせない.セーヌ川 la Seine をシュリー橋 Pont de Sully で渡り(写真 53: Pont Marie を望む),両島をゆっくり散策する.途中,汚い話で恐縮なのだけれど,「わが町を愛する私は,拾います」(写真 54)などという看板を見つけてしまう.もっとも不心得な輩はパリよりもむしろマルセイユに多く見かけられるように思われる.それともパリは清掃が行き届いているだけで,公衆道徳の水準には違いがないのだろうか.

シテ島では,手始めにノートルダム大聖堂 Cathédrale Notre-Dame de Paris (写真 55)へ.観光客多すぎ(写真 56)だけれど,重厚長大で荘重なゴシック建築を楽しむ.最高裁判所 Palais de Justice へ行って(写真 57.土曜日につき建物内部の見学は不可だった),サントシャペル Ste-Chapelle へ.こちらもゴシック建築ながら,旧約の物語を表したステンドグラスが華を添えている.

いったんセーヌ右岸に戻り,京都市の桝本市長がご執心になって一躍有名になった芸術橋 Pont des Arts へ(写真 58: 橋の向こうのドーム付き建物はフランス学士院).パリの多くの橋は建物と同じく石とモルタルで造られている外観を見せるのに対し,この橋は鋼製で,緑のペンキで塗られているのが特徴.鴨川に合うわけはなく,コピーを作るとすれば横浜などに作る方がよいのだと思う.

ルーブル宮の中庭を通り抜けてルーブル・リヴォリ駅 Louvre-Rivoli で地下鉄に乗る.この駅はホームにルーブル美術館 Musée du Louvre 所蔵のエジプト・ギリシャの彫像などの美術品が並べられていて興味深い.エコール・ミリテール駅 École Militaire で下車し,ボスケ通り Avenue Bosquet の英国式サロン・ド・テ salon de thé,ペゴティーズ Pegoty's へ.カフェと違って雰囲気が静かで落ち着ける.土日限定のシャンパンブランチと,お茶.桃のタルト(写真 59)は桃がしっかりした歯ごたえを保っていて,その下に敷かれたアパレイユもちょうどよい味だった.お茶も上等.

ペゴティーズで1時間ほど過ごしてから,エッフェル塔 Tour Eiffel へ.観光シーズン,しかも好天の休日とあって,超混雑.せっかくなので歩いて登る.塔の足の部分の中に組まれた階段を一歩一歩登りつつ,エッフェル塔ってチョコレート色のペンキで塗られているわけだけれど,ある期間が過ぎれば塗りなおさないといけないし,ライトアップ用の電球が切れたら取り替えないといけないし,などと考えてしまう.よく見ると各鉄骨には命綱をくくりつけるためのものらしいザイルが結わえて渡してあるのだけれど,はなはだ心もとない.2段目の展望台まで登り,モンマルトルのサクレクール聖堂 Basilique du Sacré Cœur,ラ・デファンス la Défence の高層ビル群(写真 60)を望み,地図に定規で線を引いて造ったようなこの町を見渡す.

塔を降りて,バトービュス Batobus 乗り場へ.セーヌ川にはいくつかの観光客向けの船が走っていて,このバトービュスはその中でもっとも気軽に乗れるもの.いくつもの橋の下をくぐってミュゼ・ドルセー乗船場 Musée d'Orsay まで.船から下りてロワイヤル橋 Pont Royal を渡り,チュイルリー公園 Jardin des Tuileries へ.カルーゼル凱旋門からルーブル美術館の新しいシンボルとなったガラス製のピラミッドを見渡す(写真 61).どこまでものびのびとした印象を与えるこの公園は,ごみ箱さえも芸術的である(写真 62).

コンコルド広場 Place de la Concorde を経てマドレーヌ教会 la Madeleine へ.ギリシアの神殿風の風変わりな教会である.マドレーヌといえば,貝殻型に焼いたスポンジケーキ,和菓子でいえば大福餅に当たるような飾らない焼き菓子のことをすぐ思ってしまうものの,マグダラのマリアにちなんでつけられた名前なのだろう.この付近は有名なブティックが集まる場所で,うち一つの有名食料品店,エディアール Hédiard でヤマドリタケ cèpe の瓶詰め,紅茶などを購入する.そのまま歩いて宿へ.

しばらく休んでから,すぐ近くのブラッスリーで定食にする.七面鳥のクリーム煮 たまねぎ添え blanquette de dinde aux oignons と桃のメルバ pêche melba,アペリティフにキールを頼む(写真 63写真 64).七面鳥はごく予想通りの味.桃のメルバは日本でもおなじみのものだけれど,仰天したのは上に載っているシャンティイの量の多いこと.これだから太ってしまうのだな,と.