7月18日(金)


写真 48
写真 47

La Provence 紙を読み,強風により山火事が広がり,方々で広い地域が焼けていることを知る.11時ごろチェックアウト.気軽な観光手段であるプチトランに乗ろうとしたものの満員のため,普通のバスで丘の上のノートルダム・ド・ラ・ギャルド・バシリカ聖堂 Basilique Notre-Dame de la Garde (長い名前だ…….写真 47)へ.こちらはカテドラルと違って観光客が多く,とりわけイタリア人が多い.同じく19世紀の建築であるカテドラルと比べると,外観はよく似ていて,サイズは小ぶりだが内側は華麗.立地に恵まれて,眺めがよいのが人気の秘密だろうか(写真 48).

バスで旧港に戻って,港の南北を固める砦の南側の方(サンニコラ要塞 Fort St-Nicolas)へ行ってみる.ごつごつした感じの土木構造で,中心部分は軍用地につき立ち入り禁止との掲示があった.地下鉄で国鉄駅へ.スモークサーモンのサンドイッチとミネラルウォーターを買って食べる.ミネラルウォーターは試しに Vittel を買ってみたところ,まるでニースの水道水のように硬い水だった.私の口には Volvic の方が合う気がする.

写真 50
写真 49

マルセイユのこの駅は行き止まり駅なので,駅舎はホームの端に位置する.15時29分発パリ・リヨン駅 Paris Gare de Lyon 行き TGV は約18両のかなり長い編成で,それにあわせて長く作られたホームを歩いて予約していた8号車に乗り込む(写真 49).ニースからクネオ行きの TER がぶっきらぼうな感じだったのと異なり,各車両の外側には列車の行き先が表示されているし,車内放送もあるし,2等車ながらエアコンはほどよく効いているしと至れりつくせり.車両(写真 50)は2階建てで,日本の新幹線に比べて静かな反面,揺れはやや大きい.

15時57分アヴィニョン TGV 駅.TGV 用に新しく作った高規格の路線を LGV と呼んでいて,マルセイユまでは LGV は伸びていないはずなので,ある地点から LGV に乗り入れるはずなのだけれど,それがどこだったのかはわからずじまいだった.窓の外を眺めていると,田園風景が南仏のものから異なるものへと移ってゆくのが見て取れる.やや灰色がかった白の壁に赤茶色のシンプルな屋根の家々.牧場には,干草の束.なだらかな起伏がどこまでも続く平原.平地なのに大きな面積を占める森林.もの珍しくてずっと眺めているうちに18時を回り,パリ近郊に入る.パリ・リヨン駅へはほぼ定刻通り到着.

パリ・リヨン駅は国際列車も発着する駅らしく,あまた並ぶ出札口には「国際列車はこちら」との掲示があり,ここでいう国際列車というのは一国の辺境と他国の辺境の間を結ぶローカル列車ではなくて,ベルギーとかドイツとかの国の大都市との間を結ぶ列車を指すと思われ,さすが大都市,と感動.地下鉄に乗り換えて Hôtel Langrois へ.地球の歩き方の地図が間違っていて迷ってしまったが,番地は正しかったので無事たどり着けた.

写真 51

この建物は長くホテルとして用いられた由緒あるものらしく,最近改装したのだという.内装や建物の造りは京大の楽友会館をそのまま階数だけ増やしたような感じで,アールヌーヴォー調の装飾が気楽な豪華さを与えている.後付けで設置されたと思われるエレベーター(写真 51)は感動的な小ささ.内側の扉は手動式なので,きちんと閉めずに放置してしまうと他の階でボタンを押しても動かないというのは少々カルチャーショックであった.宿は2つ星ながら,部屋はきわめて上質なしつらえのもので,ベッドの近くには油彩の静物画が,部屋の入り口には風景を描いた彩色の版画がかけられていて,心の込められた調度に囲まれてプライベートな時間を過ごす幸せをかみしめる.バスタブは深く,日本人にも満足できるものとなっている.一つ欠点をあげるとすれば,エアコンがないこと.セントラルヒーティングは備えられているので私には全然不足はないけれど,北の方の人にはやや不満が残るところかもしれない.

写真 52

外のブラッスリーでキッシュ・ロレーヌ quiche lorraine とショソン・オ・ポム chausson aux pommes をテイクアウト emporter して夕食とする(写真 52).