7月12日(土)


写真 1

5時に起きて,そうめんとトマトの朝食.小雨の降る中,電車に乗って大手町まで.東京駅に歩いて向かう.丸の内北口(写真 1)から駅舎に入って,総武線地下ホームへ.7時15分発特急〔ウイングエクスプレス〕1号に乗車.成田空港と東京都を結ぶ成田エクスプレスと同じ路線を走るものの,成田エクスプレスは赤・黒・白の斬新なカラーリングの車両で注目を集めるのに対し,ウイングエクスプレスは昔懐かしい肌色と朱色の国鉄カラーの車両で運行する.総武線特急の車両をそのまま使っているようだ.首都圏とはいうものの,どこか落ち着いた感のある千葉県の田園風景を眺めつつ,1時間ほどで成田空港駅に到着する.

列車を降り改札を抜けて,関空などでは見かけない改札直後のセキュリティチェックを通過し,エスカレーターをなんだか何本も乗り継いで出発ロビーへ向かう.成田空港はこの前ボストンに行ったときに使ったのだけれど,こんなにエスカレーターを昇ったかなあと少々不思議.出発ロビーに出るとぱっと視界が開けて,関空と同様に柱のない広々とした空間が現れる.航空券をピックアップして,KLM のカウンターへ.前の方に小型犬をケージに入れて預けている人がいた.珍しいものだ.週末のためか多少混雑していて少し待ったものの,無事搭乗手続きをすませ,ニース Nice までの2枚の搭乗券を受け取る.

写真 2

出国審査を通って搭乗口へ.今回はなぜか目が留まったのは,NCA (日本貨物航空)の飛行機,ノースウエストの貨物機,JAL の貨物機といった飛行機たちが多かったものの,塗装で選べば Air Tahiti (写真 2 右端)が一番見映えがする感じで,KLM はすっきりしすぎている気がする.搭乗便は KL862 (もともと成田・アムステルダム間は週5便,1日たかだか1便の運行なので,便名はそれほど意味をなさない).

じきに機内へ案内される.これまでの経験では,搭乗通路の飛行機側の端か,機内に入ってすぐのところに新聞が置いてあるはずなので,Le Monde かなんかあるかな,と期待していたところ,見事裏切られてしまった.思えば,オランダのキャリアなのだからオランダの新聞しか積んでいないのは至極当たり前のことなのだ.でももちろんオランダ語は読めないし,さりとて日本の新聞はすぐ読みきってしまうので,International Herald Tribune (IHT)をもらうことに.米国外で発行されている英字新聞としてはもっとも知名度があり,上質な新聞である.機種は B747-400 でエコノミーシートの配列は 3-4-3 と,長距離路線ではおなじみの機体.10時25分発のスケジュールを10分繰り上げるアナウンスがあったものの,結局出発はやはり10時25分ごろになった.前の座席の背のポケットに入っている機内誌はオール英語と思いきや,希望者にはオール日本語・縦組みの機内誌「和蘭」が配布されていた.オランダ旅行をするわけではないけれど,受け取って興味深く読む.

夏時間が実施されているので,アムステルダムとの時差は7時間.日本海を北上する機内で時計を7時間遅らせると,目的地の時刻は早朝4時32分であった.ほどなくお昼ご飯の時間.メニューは配られない.メインは鶏と日本風カレーの選択で,もちろん鶏を選ぶ.ドイツか北欧かどこかの家庭料理といった雰囲気の料理で,かなりいける.温められたパンがつく.おもしろいなと思ったのは,食後にいつもコーヒーと紅茶を提供しに来るわけだけれど,紅茶を持ってくる人が「English tea?」と聞いて回っていたこと.紅茶は「Tea?」と言ってくるのが普通だと思っていたけれど,緑茶も提供されるので区別する必要があって,black tea よりも English tea の方がこういうシチュエーションにはふさわしいということなのだと理解する.ただ,緑茶を持ったオランダ人乗務員さんが「お茶ー?」と聞いて回るのは,いただけない.

食後は,機内誌を読んだり.考えてみれば,シベリア上空を飛ぶのは初めてだ.英語版機内誌 "holland herald" に載っていたのだけれど,Geochron という壁掛け時計(?)の広告もなかなかおもしろかった.横長の世界地図上にいま昼間の地域が明るく表示されるというもので,季節によって明るく表示される部分の形が変わる点が興味深い.値段は 1,395 GBP 〜 2,095 GBP と高めだけれど,会社の幹部会議室のインテリアなんかにいいかもしれない.

7月14日,フランスの革命記念日を目前に控えているとあって,IHT になぜか銀座の天國(てんごくではなくて,「てんくに」と読む天ぷら屋)が Félicitation pour la fête nationale ! 「国民的祭典を慶祝申し上げます」との広告を出していた.ちなみにこの日のことを日本語ではパリ祭と呼び,英語では (the) Bastille Day と呼ぶが,フランス語では単に le quatorze juillet 「7月14日」と呼ぶ.

長距離路線の常として,食事と食事の間に映画が上映されて,寝たい人は寝てくださいという時間になるのだけれど,今回はその途中にカップラーメンとアイスクリーム(どちらか一方を選択)が配られて少々驚く.私はカップ麺というものにまったく関心を覚えないので,アイスクリームを選んだものの,安物でおいしくなかった.帰って調べてみたところ,長距離路線の夜食にカップラーメンを出すというのは JAL がビジネスクラスでやっていて,好評なのだとのこと.

写真 3
写真 4

定刻より1時間ほど早く,14時20分ごろにチューリップと運河の国の空港に到着(写真 3).成田を出てから正味11時間ほどしかたっていない.北回りというのはずいぶん早く着いてしまうものだと感動する.ニース行きに乗るまで6時間半ほど時間があるので,まずは空港内の美術館(どちらかというと美術室と呼ぶ方が正確か)へ行くことにする.小さいながら,オランダのいろいろな作品が揃っていて楽しめる.ミュージアムショップには van Dijck や Vermeer など一流画家の作品の複製画が並んでいて,こちらもなかなか.

ひとしきり鑑賞してから,空港内を歩き回ってみることにする.普通,空港といえば,その一部に免税品店が入居しているというものだけれど,さすが有名なスキポール空港,Airport City と自称しているだけあって,売り場はきわめて広く多様で,むしろショッピングモールに飛行場が付属しているといった方が正確な感がある.コスメ屋さん,時計屋さんなどは日本でもおなじみだけれど,ごく普通の食料品店あり,家電屋さんありとみやげ物店の枠から大きく踏み出していて,食べ物屋さんも,メニューが前菜から始まる本格的なブラッスリーあり,サンドイッチ屋さん,デリ,バー,割高だけれどすし屋さんもあって豊富.Meditation Centre (瞑想・礼拝のためのスペース),カジノにホテルまである.これらのうちホテル以外のすべてが入国審査前の(出国審査後の)エリアにあるというのが驚きで,実に活気のある空港だ(写真 4).椅子や机も豊富に用意されているので,便利である.歩き回った後はしばらく横になって体を休める.

ヨーロッパにはシェンゲン条約というものがあって,オランダとフランスもその加盟国なので,蘭仏間の航空便は入国管理上は国内線の扱いとなり,オランダで入国審査を受ける必要がある.ただし米国と異なり乗り継ぎ地でいったん預け荷物を引き取って税関を通る必要はない.それで乗り継ぎ用の入国審査を通過して,シェンゲン条約加盟国行きの便の出発する搭乗口のあるエリアへ.このエリアは少し混雑していた.夕食としてローストチキンサンドを買って食べる.

ニース行きは21時15分発で,私が乗ったのは KL1273 なのだけれど,ほかの航空会社の2つほどの便名も付いている共同運航便で,KLM の機体と乗務員で運航されている.機種は B737-300 で,座席配列は 3-3.出発時にはまだ周辺は明るくて,機上で夕暮れを迎える.機内食は,丸パンのハムサンド.定刻よりやや早い22時40分に,ニース国際空港に到着.

空港のすぐ前,500 m ほどのところの Etap Hôtel Nice Aéroport を予約してあったので,行こうとすると,空港とホテルを横切る道路に横断歩道がなく,交通量も多いので渡れない.「この道渡るべからず 下を通って行け」との標識が立っているのだけれど,その下の道が見つからない.戻って空港のインフォメーションに聞いてみても要領を得ず,再度よく探してみたら,空港から出て向かって左手が立体交差になっていて,道の下をくぐることができたものの,少々時間を費やしてしまった.ようやくホテルにたどり着くと,この時間,フロントに人は常駐しておらず,予約に使ったクレジットカードを玄関のカードリーダに通すと部屋番号と部屋のロックを解除するための暗証番号がプリントアウトされて出てくるとともに玄関のオートロックが解除されるという仕組みになっていた.無事その玄関を通過して部屋に入る.バックパッカーなどの若者が出入りする宿だが建物は新しく,部屋は設備的には最小限のものしかないものの清潔.