みしっく今日のひとこと - 2013年3月


■2013/ 3/25(月)  いろいろ勉強になった.

「惜別の歌」を楽譜なく初見で2度ほど歌うことに.島崎藤村の詩を基にしていて,歌声喫茶でよく歌われたのだと知る.

次のように,いろいろ考え抜かれた,また多くが優れて今日的な話題提供に知的刺激を受けた一日だった.

個人の行動履歴収集と聞いてすぐ思いついたのは京都府学連事件だけれど,収集目的や過程も違うし時代背景も違うのであまり参考にならない….

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■2013/ 3/17(日)  まだ最高裁がある?

庶民の弁護士 伊東良徳 まだ最高裁がある?民事編」を興味深く読む.

私は,最高裁の示す法解釈は大いに参考にしつつも,普通の事件で最高裁が高裁と異なる判断を示すというのはあまり期待できないのではないかと思っていた(1パーセント未満?).それどころか,第一審ではそれなりに丁寧に審理されても,控訴審では第1回口頭弁論で即日結審し,証拠申請をすべて却下するということも往々にあると聞く(こちらは頻度不明).

その最高裁の実情が上記ページに記載されていて参考になる.上告審では,上告を棄却する場合には口頭弁論を開かない(民訴法319条)ので,ほとんどの事件では当事者は最高裁の法廷に赴く機会がない.相当ベテランの弁護士さんながら,民事事件で最高裁で口頭弁論をしたのは昨年3月が初めてとのこと.

かつて小泉首相が「思い出の事件を裁く最高裁」なんていう川柳を作ったころは,10年越しの事件なんていうのがざらにあったように思う.最近の最高裁は目ざましく事件処理が早くなったけれど,それでも1,2年ほど寝かせられることはよくあるように感じる.

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■2013/ 3/11(月)  とある少額の訴訟

橘玲『臆病者のための裁判入門』(文春新書,2012年)を読み始めたところ.

交通事故があって,損保会社の担当者が当事者の意思に反して事故を勝手に処理しようとしたということで,契約者が損保会社を相手に保険金の支払を求めて提訴した,という事件.その額,わずか12万円.

原告が外国人(日本に長期在留し,英語は話せるが日本語は一応できる程度で,一人での訴訟追行はやや難しそう)というのもポイント.著者は原告の友人.

東京簡裁に訴状を持っていったら,事実関係に複雑な点が多いので裁量移送しますよ,それより初めから地裁に訴えたらと言われて,地裁に提訴したら,簡裁に移送され,簡裁からは(おそらく別の理由により)さらに地裁に移送されて,結局地裁で審理が行われ,事実関係で揚げ足をとられて原告敗訴の判決.

控訴審(東京高裁)では,原告側にも代理人弁護士が付いて,第一審で不足していた立証活動を懸命に行った?行おうとした?が,裁判所が両当事者の弱点をそれぞれ突いてきた結果,社会通念上妥当と思われる内容の和解(原告側の実質的勝訴)が成立した.これまでの間,事故から3年1か月,紛争発生から数えても2年5か月が経過していたとのこと.

たまたま著者が文筆業だったから,これで本が1冊出せたのでよしという考えもありえるけれど,一般市民的には時間とお金がかかりすぎる.定型的な事件であれば5万円程度でも訴訟にはなじむけれど,事実上あるいは法律上,込み入った事件は,数十万円程度のものを裁判所で解決してもらおうとすると徒労感だけが募ってしまいそうだ.

訴額は数十万円程度でも,若干なりとも先例的価値が生じえるものならば,話は別だろうか.東京地判平成24年6月15日金判1406号47頁(裁判所の判例検索システムには未登載)は,金判の今年の1月1日号に掲載されたばかりでもあり,まだ判決文を十分に読んでいないのだけれど,1つの普通預金口座に4名が旅行費用を共同で積み立てていた預金につき,預金の帰属先の認定,民法上の組合の成否などを検討した上で,預金の帰属する者を受託者とし,旅行費用を積み立てた者を委託者兼受益者とする信託の成立を認め,当該預金への一般債権者の差押えは無効であるとして,受益者から差押債権者から不当利得返還請求を認めた事例である模様.控訴審で和解が成立したため高裁の判断は示されていない.ある先生によれば,これが同種事例で信託が認められる限界事例であろうとのこと.

レアケースだろうけれど,このように裁判例として注目される可能性があるのならば,少額でも法律家にとってはやりがいがある事件なのかもしれない.

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■2013/ 3/ 3(日)  保育所不足問題がクローズアップされている.

多くの大都市では,子どもが認可保育所に入れない問題が長く続いているけれど,東京都区部ではことに深刻で,今年は杉並区,足立区で母親たちが集団で区へ行政不服審査法に基づく異議申立てをしていると報じられている(2月25日付東京新聞朝刊1面トップ,3月1日付同29面).

この問題に関連して,2月26日付同1面トップ記事「認可保育所不足裏づけ 1万9000人入れず 今年4月時点 23区5年で2.6倍」は,東京23区では2008年度は4月時点で6,692人の子どもが入れなかったのに対し,2013年度は17,218人が入れない見込みで,保育園に入れない子どもの数はこの5年間で2.6倍に増加したと報じている(同紙調べ.港区・中野区はデータの提供がなかったので除いたとのこと).

4月といえば一番入りやすい時期であり,夏から秋冬にかけて待機児童の数は増える一方だから,4月でこの状態ということは夏以降はさらに過酷な競争になることが懸念される.

足立区などは,認可外の施設などで対応するとして説明しているが,2月25日付記事によれば,保育環境の「最低ライン」として国が定める基準を守るのが認可保育所.都の認証保育所など認可外施設は,1人当たりの面積や保育士の要件などが緩められている.国の基準は戦後まもなく,保育する上での最低ラインとして定められ,高いものではない,という.

3月1日付記事によれば,足立区の母親らが昨年2月にまとめたアンケートには,自由記述欄に「保育園が見つからず会社をやめた」「高い認証保育園に預けて働き(給料が)ほとんど手元に残らなかった」「(1歳では)入りにくいので,もう少し育児したかったが,ゼロ歳で入園させた」など,保育所確保の厳しさをうかがわせる記述が見られたという.

また26日付記事は,有識者のコメントとして,認可保育所不足が深刻になった背景には,2004年に自治体が運営する認可保育所への国からの補助金が一般財源化されるなどの国の政策もあること,都の認証保育所の入所さえ難しくなってきていることを紹介している.一方世田谷区は,足立区(や他の多くの区)と異なり認可保育所の定員増に積極的だが,子どもの数の急増に追いついておらず,地価が高いため土地の確保に苦労しているという.

しんぶん赤旗もこの間の動きを簡単に報じている.

行政法には詳しくないものの,行政不服審査法に基づく手続については,入園基準を定めていないか,定めていてもそれに従っていないといった場合には処分が覆される可能性があるとしても,それ以外の場合には主張が認められる可能性が低いのではないかと思っている.

ただ,個人で行動してもメディアにはまず取り上げてもらえないので,今回集団で意思表示ができ,社会に向かって問題提起できたことはよかったのではないかと思う.

(ほぼ)毎年恒例,JRの春のダイヤ改正につき,時刻表を買い求める.私の場合,仙石線の全列車が記載されているかどうか,および小型軽量であるかどうかを基準に選ぶので,交通新聞社発行の「小型全国時刻表」を買うことになる.

今月は,巻頭エッセイ「いとしの路線」に酒井順子氏が「米坂線」と題して寄稿しているのが興味をひいた.厳寒期に雪を見に行くためにこの路線の列車に乗るのが好きなのだとのことで,そういう楽しみ方があるのだと

私は,確か1997年夏に山形県の長井市を訪れた帰路に,この路線を利用して新潟に出て,夜行急行〔きたぐに〕で帰洛したことがあり,それが唯一の記憶(往路は東京経由だったため米坂線は利用していない).あとは,東日本大震災の際,東武・野岩鉄道・会津鉄道ルートと並んで東北地方と首都圏の間を結ぶ鉄道路線として復旧が早かったというニュースを目にしたぐらい.

夜行急行〔きたぐに〕は,電車列車で寝台車が入っているという点に特徴があり,関西と東北との間を行き来するこの旅行にはちょうど適してもいたけれど,残念ながら利用の低迷により今年初めに廃止になってしまった.

消えていった夜行列車といえば,北斗星などに用いられた「夢空間」という車両があるが,2月21日付東京新聞朝刊32面「TOKYO発」で取り上げられたところによると,このうちの1両をフランス料理店のシェフが買い取って,江東区木場のアタゴールというレストランで利用しているとのこと.ダイニングは車両の隣に駅舎を模して設けられていて,車両はお茶やお酒を飲むラウンジとして使っているが,1日1組限定で,車内でディナーを提供しているという.

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