みしっく今日のひとこと - 2011年4月


■2011/ 4/24(日)  東京電力の債務超過?問題を考える.

shasaiwatchさんという人が東電の国有化は是か非かと題して考察を書いているのに目が留まった.

「単純に国有化するやり方は問題を解決しないと考えます」「今回の事故の原因は東電の企業体質にあると考える」「利益至上主義が福島第一を起こしたとはshasaiwatchは考えません。利益至上主義は競争の激しい世界で発生するものであり、東電はその対極にある業界でした」などと述べている.

そして,解決策としては「さっさと会社更生してしまうべきでしょう。会社更生となれば、株主も、担保付社債の社債権者も全く保護する必要がなくなり、経営陣は強制総退陣と東電を変えるためには最高の土壌が整います。それと合わせて「福島の事故に伴う損害賠償請求権は他の債権者に優先する」という法律を1本国会が通し、損害賠償を保全します。」と提案している.実に明快であり,座布団を1枚も2枚も差し上げたい.

上記のような,今回の事故によって生じた損害賠償債権を一般債権,ことに大口債権者に優先させる法律は,すぐ作れるのだし,さっさと通してほしいもの.大事件後に事後的に債権の順位を変更した類例として「オウム真理教に係る破産手続における国の債権に関する特例に関する法律」(平成10年法律第45号)がある.今回の同様の法律は,民間債権を対象に含む以上,憲法29条1項に反するという主張も可能だけれど,本件事故の被害者を救済するという社会政策上の目的達成のための規定であり,また,特に大口債権者や投資家としての債権者にあっては,債務者が原子力による発電事業を営んでいることおよびそのリスクを事前に知ることができたことから,債権者間の平等を損なう限度は必要最小限にとどめられるので,上記目的達成のための手段として必要性または合理性に欠けるものではないため合憲と解する.ついでに,法律により損害賠償債権に順位が後れることとなる債権は,事故発生前に生じたものに限定しておけば,2兆円緊急融資の保護も問題ないし,今後の運転資金の確保にも支障とならない.

しかし,会社更生手続は「金融システムに重大な支障をきたす可能性が大きい」などとしてなかなか検討に上らない.仮に金融システムに支障をきたす可能性が生じた場合は,それはそれでいくらでも手の打ちようはあるというもの.負債総額が1兆でも10兆でも,かかってきませいである.金融市場を人質に取るような主張を唱えることで金融市場の原則をゆがめるというのは,まことに納得感に乏しい.

蛇足ながら,電力会社に限っていえば,ボトルネック独占を有しており,商品が売れなくなることが考えられないので,将来のキャッシュフローはマイナスにはならないはず.なので,債務超過になるとか赤字体質の会社になるというのは,いまひとつ合点がいかない(こう言うと,東京電力管内の人から「消費者などの電力需要家を犠牲にするのか」と激しい批判を浴びそうだけれど).

さらに蛇足ながら,電気事業法や電気事業会社の株式会社日本政策投資銀行からの借入金の担保に関する法律の規定に基づき,社債と日本政策投資銀行の貸付金はその他の貸付金等に優先する効力が与えられている.

本論に戻って,会社更生手続が採用されないとすれば,そして(私の想定とは異なるものの)再建のため負債の整理が必要だとすれば,デットエクイティスワップ(DES)というのが王道なのではないか.これは債権を株式に振り替えるという方式であり,債務の株式化と訳される.ここ数年来,政府は企業再生税制においてDESによる企業再生を促してきたのに加え,電力会社の監督官庁でもある経産省は,昨年1月に「事業再生に係るDES研究会報告書」をまとめていたというもの.DESにより事故前の負債を削減することで,市場への影響を最低限にとどめつつ,不公平感のない会社再建が図れるのではないか.DESを採用すれば,債権を振り替えて割り当てられた株式の価値は損害賠償額や将来のキャッシュフロー次第で増加するので,何兆円の負債削減が必要なのか確定しない状態でも再建スキームを決めることができる.同社の債権者である日本政策投資銀行や大手銀行,保険会社にとっても,債権の帰趨が不透明なまま推移するより,事故による自社経営への影響を確定して,前向きに今後の経営に取り組む方がベターなのではなかろうか.

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■2011/ 4/20(水)  東京電力の株主責任について

佐久間裕幸という人が,東京電力の株主に「過失」がないとか,同社の開示資料に原子力発電に関する危険性の記述がないとか,株主責任は「未曾有の天災に備えた原発設置をしていなかった経営責任をも含むものではない」などの理由から,東京電力の株主には責任はないとブログで主張している.責任がないというのは,同社の経済的損失を負担させるのは筋違いだということを主張しているのだと思われる.

私の先日の記事と全く反対の意見なので興味深く読んだのだけれど,この主張は,現行株式会社制度の解釈としては無理がある.

ブログであるからにはコメント欄があるわけであり,その中で有益な議論が交わされている(株主を救済するのは筋違いといったコメントが多い).私のコメントは,読み返してみると,いささか上から目線の箇所が見受けられると,少々反省.しかし,この主張にはやはり無理があると思うので,私見を例によって箇条書きしてみる.

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■2011/ 4/16(土)  日本はスウェーデンになるべきか / 東京電力の今後について

高岡望『日本はスウェーデンになるべきか』(PHP新書,2010年)を読んだ.

高福祉の工業国として知られるスウェーデン.子ども手当の先駆者でもある.アメリカ的な社会とスウェーデン的な社会のどちらを選ぶかという文脈で語られることが多いこの社会を,外交官として赴いた著者が観察して出した本.

著者は学者ではないためか,実証的な分析がほとんどなく,筆者の体験に基づく推測が多くを占め,論証は弱いものの,一読に値する.著者によればスウェーデン社会を語る上では福祉水準などだけを取り上げるのではなく,この国の本質に根ざした議論が必要だとし,スウェーデン人は「一見北欧の日本人」であるが,個々に見ていくと,「自立した強い個人」「規則に基づく組織力」「透明性」「連帯」という4つの特質にまとめられると見立てている.

日本は福祉や年金,労働市場の今後について,米国ではなくスウェーデンに学ぶことが求められるけれど,有権者や企業の理解を得ていくのはたやすいことではないと感じた.なお,医療水準だけはスウェーデンより日本の方が優れているようだけれど,それがなぜなのかはよくわからない.

1980年代後半の経済危機にスウェーデンがいかに対処したか(私の認識では,自国通貨安への誘導による輸出回復と物価上昇)については記述がない.2008年のリーマン・ショック後も,やはり自国通貨安(対ユーロで2割の減価)により乗り切ったのだということで,労働市場に身を置く者としてはうらやましい限りである(しかも今度は大幅なインフレもなかったようなので,なおさらうらやましい).

厳しい経営状況に直面する東京電力の「延命策」が,経産省と9電力会社によって調整されていると聞く.

筆者の考えは3月30日に明らかにしたところ.企業の経営再建は,公益性の高い業種であっても,原則として会社更生法やそれに類する手続で行うべきであり,同業他社に奉加帳を回したり,ましてや政府が資金を投入するというのは筋が通らない.仮に東電が債務超過に陥っているとした場合には,粛々と債権カットにより再建を進めるというのが市場経済の原則の帰結であり,JALの経営破たん・それに続く再建ではその正しい方策が採られたといえる(整理解雇が本当に必要だったのかは別論).

今回,特別に政府資金を投入するとしても,東京電力が損害賠償義務を履行した上で,それでも不足額が生じた場合に限り,その対象は損害賠償を初めとする公益上必要最小限の部分にとどめるべきであり,そうでなければ民間企業に対する政府の公平性を害し,政府の権威・正統性はますます失墜すると見込まれる.日本経団連の米倉弘昌会長は記者会見などで,東京電力の国有化は必要ない,国有化論議により企業や投資家に影響が及んでおり「日本の経済・産業が駄目になる」,「今回の場合は、国が全面的に支援しなければならない」「国の支援があって初めて、原子力産業の発展と被災者救済がバランスよく保たれる」,「東電は(大型の地震と津波による)被災者の側面もあり、政府が東電を加害者扱いばかりするのはいかがか」などと主張しているが,これは市場経済の旗振り役,財界を代表する立場を外れたもの.状況がよいときは政府の関与を最小限にとどめる規制緩和の主張をしておきながら,状況が悪くなると政府の支援を求めるというのはご都合主義との批判を免れない.市場経済の原則からすれば,経営者には天災被害によるビジネスリスクも含む形での経営責任があるのであり,経営が悪化すれば退場を余儀なくされるというのでなければならない.もし債務超過や支払不能に陥ったときには,電力供給という仕事は残りつつも,事業を譲渡するなどとして会社は市場から退出することになる.株主や社債権者もリスク資金の供給者として当然,投資元本が毀損するという形で責任を分担することになる.その結果として機関投資家が損失を被るというのも投資判断の帰結として正しいことだ.また株主責任について週刊ダイヤモンド(4月14日付,電子版)は,政府が「東電の株主は約100万人で、その多くが銀行預金と同様の安全運用先として東電株を保有していた個人株主であることを重視せざるをえない」(官邸幹部)との判断に傾いているとしているが,もし発言が事実だとすればあきれ果ててしまう.

天災被害にあった企業には業種や規模の大小を問わず,さらには災害の規模を問わず政府資金を平等に投入する(それも貸付ではなく出資という形で)というのであれば,それも一つの方法ではあるけれど,果たしてそれが日本経団連の望む姿なのだろうか.

電力の安定供給は損害賠償から切り離して考えるべきであり,原発や損害賠償を切り離せば電力の供給事業自体は赤字になるはずがないので,電力供給事業に政府が資金を投入しても必ず返ってくる見込みがある.民営化前の郵政事業は非営利・独立採算で安定経営を実現できていたので,公的関与をどの程度とするかはともかく,同様の考えで対応することはできると思うし,それにより電力の安定供給は実現可能だろう.

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■2011/ 4/11(月)  国際私法の適用結果の不思議 / 被災地松島からの脱出記

最近は,もっぱら国際私法.

日本の国際私法では,婚姻の実質的成立要件を各当事者の本国法としている(法適用通則法24条1項)ので,日本の市町村役場は婚姻届を受け付け次第,外国法を適用して婚姻の成否を審査する必要が生じる.原則として当事者が本国から発行を受けた婚姻要件具備証明書を徴求して審査することにしているが,この書類で要件の全部を審査しつくせるものでもない.ことに一部の国では,書類上では容易にわからないような要件を定めているので,実際の審査は困難なのではと.例として韓国民法809条1項(2005年改正後の条文)は,「8親等以内の血族(親養子の入養前の血族を含む)の間では婚姻することができない.」(なお同条2項は一定範囲の血族の配偶者や姻戚等との間,同条3項は一定範囲の養方の親族であった者との間の婚姻禁止を定める)と規定するが,当該要件を満たすかどうかの審査は容易ではなさそう(韓国内であっても審査は難しいかもしれないが).

また,日本で婚姻届を提出した者の双方が日本と韓国の重国籍を有する場合は,親族関係によっては,日本では日本法が適用される(法適用通則法38条1項但書)結果,上記の要件を満たし婚姻が成立するものの,韓国では韓国法が適用される(韓国国際私法3条1項但書)結果,婚姻が成立しないという場合も考えられる.

英米法では,婚姻の実質的成立要件を挙行地法(つまり,日本にたとえれば婚姻届を出した国の法律)とするらしい.自州・自国で認められなくても要件の緩い州や国に行って届けを出せば認められるのだとすると,日本から見ると不思議である.しかも米国は婚姻要件具備証明書を発行しない,らしい….

被災地松島より脱出というブログの記事が興味深い.

松島を観光していて偶然被災した人の体験記.絵文字入りながら簡明要を得ている.例によって箇条書きで要約すると以下の通り.

仙台に比べれば,東京あたりは揺れは小さかったし津波も無視できるくらいだったけれど,通信手段が乏しくなったとか,大変な渋滞になったとか,公共交通機関が運休で困ったといった事情は,上記ブログの記載と異ならない.

なお上記の人は,13日に山形の実家に移動した後の交通手段は不明ながら,鶴岡を経て新潟に向かい,新潟から上越新幹線で東京の自宅に帰ることができた(15日)模様.

私見では,こうした非常時にこそ公共交通機関が生きるのであり,安易に運行を停止したり駅のシャッターを閉めたりといったことをしてほしくなかった.タクシーや実家の車といった手段がたまたま利用できた人はよいけれど,そうでなければ松島付近で被災した人はどこにどう脱出したのだろうか.乗客の安全を確保できないから運行しないというのは正論だけれど,鉄道が利用できない結果,リスクを承知で自動車を利用するということになれば全体最適にならない.鉄道会社がリスクを利用者に押しつけているだけのように考えられてならない.

こんなことだと,いつ帰宅不能になるかと怖くて徒歩圏外は出歩けない.帰宅難民になったら無理に帰宅を試みるなというけれど,災害時こそ家を空けることはできない,家族の世話のためには無理でも何でも帰宅しなければならないのだから,そのための交通手段が迅速に入手できるような策があるべきだと思う.マグニチュード7クラスの余震が1週間に2回続けて起きて交通事情が不安定になったりすると,そんなことを思ってしまう.

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■2011/ 4/ 9(土)  「オール電化」の終焉

船瀬俊介『もしも,IH調理器を使っていたなら』(三五館,2010年)を読んだ.

著者はあの「買ってはいけない」の著者でもあり,内容には科学的に論証できない事柄が含まれていたり,単純な不勉強に基づく誤りと思われる記述(例: エコキュートのヒートポンプは,空気をポンプで圧縮して発熱させる旨の記述があるが,正しくは空気ではなく二酸化炭素を冷媒として用いる)が混在していたりという点はいただけない.

いまや電力需給逼迫により,オール電化住宅はできれば都市ガスや灯油など他の熱源を併用するようにすることが望まれる.集合住宅では難しいと思うけれど,戸建住宅の場合はまだ可能な範囲だと思う.オール電化の新規導入はなおさら稀なことだろうし,もはやこの本を読む意義も薄れてしまったかもしれない.

ただ,IH調理器やオール電化の欠点を,疑わしい事項も含め列挙しているのは,今後の資料として役立つと思われる.

電気は,エレベータやポンプ,エアコンなどの電動機を動かしたり,電子機器を動かすのには欠かせないものだけれど,熱として利用するというのは本来無駄が多い.原発や火力発電所で熱を電気に変換して,遠いところから運んできて,家庭で熱に変えるので,それぞれの段階で損失が発生してしまう.そのため,他の熱源が利用できるのであればそれを利用した方がよい.一般論としてはそうだけれど,具体的にどのような得失があるのかが,この間のオール電化の普及によって明らかになってきたということなのだと思う.

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■2011/ 4/ 6(水)  エネルギーの消費地生産について

この日記では,震災を受けて3月17日に電力税の導入を,3月22日に電力税を導入しないとした場合の電力割り当ての統制を,3月30日に電力会社の分割再生を,それぞれ提言してきた.

今夏の電力不足による東日本エリア全体の操業度低下による経済活動の停滞・生活への影響はほぼ確実で,社会的混乱も懸念されるほか,今後数年間,夏と冬には経済・生活への影響が発生するとみられる.

そこで,今夏には間に合わないものの,今冬や来夏に向けた対策として,エネルギーの消費地生産を提案したい.

大工場,特にエネルギー多消費型産業の工場には自家発電設備を備えるところが多い.これは,増設により供給力を拡大すればよいのでそれほど問題とはならない.

今後新たに求められるのは,それ以外の需要家における取り組みである.都市での電力生産というと,選択肢としては火力発電ということになる.現在の大規模・先進的火力発電は,コンバインドサイクルの利用などにより,発電効率がきわめて高く,分散電源で同様の発電効率を得ることは無理である.仮に分散電源を都市の多くの場所に建設する場合,確かに供給力拡大には役立つものの,省エネに逆行し,長期的な解決策としては問題がある.

そこで,火力発電で電力を生産する際は,併せて熱が発生することから,コージェネレーション(熱電併給)により熱を活用することが必須となる.

コージェネの例としては,数年前に稼働を開始した六本木ヒルズの最新鋭設備(規模を生かして発電所並みのコンバインドサイクルを導入し,さらに熱を利用することで発電所を超える総合効率を達成)がよく知られているほか,戸建住宅での都市ガスなどを燃料とする設備として,レシプロエンジンを利用するコージェネ(「エコウィル」)や,燃料電池を利用するもの(「エネファーム」)がある.しかし,集合住宅や中小オフィスビル,小規模工場・病院など向けのソリューションはないのが現状だ.10年ほど前にマイクロガスタービンが流行するかに思えたものの,価格が低下せず,電力会社の電力料金値下げにもあって普及はならなかった.

集合住宅やオフィスビルには,一定以上の高層・大規模建物には非常用発電設備が設置されているものの,常用としては使用されず,またコージェネ設備はほとんど設置されていない.普及のハードルになっているのが,電気事業法により発電した電力を他に供給することが難しいことと,環境問題である.マンションならば共用部に供給することはできるものの,系統連系して各住戸に電力を供給することが法規制によって阻まれているほか,売電も難しい.マンション全体への熱供給も,電力供給ができない状況で経済的にペイするかという問題で実現が難しいほか,熱供給事業法がハードルとなる可能性がある.オフィスビルでも状況は同じだ.

そこで,一般的な規模のコージェネで発電した電力を住戸やテナントへ供給することが可能となるよう,電気事業法の規制緩和を提言したい.電力会社の強い抵抗にあって長年実現していないが,現下の情勢にかんがみて押し切りたいところ.売電(電力の卸供給)は現状でも一応可能だが,電力会社による規制などで難しいことがある.これも原則として自由化とすべきで,需給バランスの維持などにつき技術的な問題があるのであれば,ICTの活用による発電の制御によって前向きに解決していくことが求められよう.

一方環境問題について,非常用発電機は騒音・排ガス基準が緩やかだが,平常時用の電源としては騒音・排ガスに十分留意する必要がある.特にエコウィル(最近肩身が狭いヒートポンプ式給湯器)を設置した住宅の近隣で健康被害を訴える事例が相次いでいることもあり,環境規制は緩和すべきでない.マイクロガスタービンエンジンなら規制をクリアできるものの,設備コストが高い(キロワット当たり30万円以上か)ので無理がある.また軽油を燃料とする場合には地震時の安全確保という課題もある.

そこで,中小のマンションやオフィスビルでは,エコウィルに用いられているような新型のレシプロエンジンを用いることにより,騒音・排ガスの基準をクリアすることが必要となりそうだ.洪水リスクが大きい地域では,ライフラインを担う企業のビルの予備電源にみられるように2階〜3階の高さに発電設備を設ける必要がある.設備コストが割に合うならマイクロガスタービンを屋上に設置するという選択肢もある.燃料として軽油を使う場合には,地震被害防止のため燃料タンクは地下に設置することになるが,都市ガスを燃料とするならば燃料タンクの設置は不要となる(ガス供給断時の建物機能確保のため,非常用の軽油焚きレシプロエンジンは別途設ける必要あり).いずれにしても,系統連系し住戸・テナントへの電力供給や売電をするとともに,停電時には単独運転に切り替えて,給水ポンプ・エレベータ・階段の照明などの必要最低限の建物機能を維持するとともに,余剰電力が見込まれる場合には住戸・テナントへの電力供給も可能としたい.レシプロエンジンに並列させて太陽光発電を組み込むことも考えられる.なお単独運転時には,住戸・テナントの消費電力を強力に絞る仕組みを入れる必要がありそうだ(例として,単独運転時にはブレーカーで自動的に1住戸当たり供給電力を5〜10アンペアに絞るなど).生成した熱は温水の形で住戸・テナントに供給することになる.熱供給事業法の規制緩和で近隣の戸建て住宅への供給も可能となれば,さらに効率が増す.

こういったエネルギーの消費地生産の取り組みを後押しするため,政府からの補助金の交付ばかりでなく,先に提言した電力税による経済的インセンティブの付与,太陽光発電促進付加金にならった仕組みの創設も考慮に値する.

技術革新が進む中,分散型電源やコージェネは,戸建てや自社ビルの太陽光発電などを除いてはなかなか普及してきていないものの,今回を機に本格的な普及を図りたいもの.これにより日本経済の回復,雇用の創出にもつながるのではないか.

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