みしっく今日のひとこと - 2011年3月


■2011/ 3/30(水)  今次の震災を受けての電力会社の再建について

小政党から興味深い提案が出ている.みんなの党の「電力会社一時国有化」案とか,共産党の「復興国債を発行し,大企業に引き受けさせる」案とか.

後者について一点付言するとすれば,個人向け国債のような非市場性国債とすることにより,今後の金利動向に伴う評価損益を計上しなくてもよい可能性があるので,普通の国債と異なる非市場性国債を発行することは意義があることだと思う.割当先は,主に金融機関を中心とし,それに流動資産の多い大企業が一部加わる形だろうか.

電力会社については,電力が100年前の鉄道に匹敵する重要な社会インフラであることから,電力の安定供給と発電所の安全性確保を確保することを趣旨とする必要があり,私案を作ってみた.

  1. 被災電力会社再生法を制定する.内容は鉄道国有化法,金融再生法,更生特例法を参考し,会社更生法の一部規定を準用しつつ,以下の規定を盛り込む.
  2. 国が被災電力会社(今回は東京電力と東北電力)の全株式を強制的に取得する.取得価格は後で決める(後の手続から考えると0円となる公算が大きい).
  3. 被災電力会社を合併し,東日本電力ホールディングスとする.
  4. 送配電部門,火力・水力発電部門,原子力発電部門を分割し,東日本送配電,東日本発電,東日本原子力清算の3社とする.
  5. 次いで,東日本送配電の株式を国が強制取得する.取得価格は,後で決める(総額数千億円になるか).ここまでで,東日本電力ホールディングス(持株会社)の主な子会社は東日本発電と東日本原子力清算の2社となることになる.
  6. 持株会社は既存の債権者への弁済と訴訟対応に特化する.債務超過が明らかになった場合は損害賠償債権は全額支払,その他債権は一律削減とする.従業員数は数十名程度とする.
  7. 東日本送配電会社は政府の強力な監督の下,送電インフラの増強を行い,電気料金の徴収も行う.必要に応じて電気料金の値上げ申請も行う.
  8. 東日本発電は既存の電源開発株式会社と同様の卸電気事業者となるので,政府の監督も同水準にとどめる.将来的な上場も検討する.電力の卸価格は他社と同程度とする.
  9. 東日本原子力清算は,かつての国鉄清算事業団のような役割を担うこととし,分割前に生じた債務は持株会社が重畳的に支払責任を負うこととする(今回の原発事故による債務も含まれることになる).安全管理について従来以上に政府の監督を強める.
  10. 再編4社とも,聖域なきコスト削減を断行する(送配電会社については独占企業となることから,政府の強力な監督によりコスト削減を実現.発電会社は他社との競争により実現.原子力清算会社・持株会社については株主である政府および債権者の監督により実現)

こうすれば,散々原発事故や計画停電で困難を強いられたのに電気料金を値上げするとはけしからんという国民の声に応えられるのではないかと.

また,民営のままで送配電会社を分離すると送配電網増強のインセンティブが低下し,電力の安定供給を阻害すると指摘されている.発電所が充実していても送配電網の容量が小さいと停電が発生するので,そうならないよう,送配電会社は東電・東北電力グループからは切り離して国有化することで対処するようにしてみた.

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■2011/ 3/28(月)  就業規則(労働条件)不利益変更法理の今日的意義(?)

計画停電のあおりで,先週の生協の配達は冷凍食品が全品欠品となってしまった.冷凍品センターで働いている人も大変なのではないか.

厚生労働省が面白い動きをしている.

15日付の労働基準局の課長通知では
「休電による休業の場合の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第26条の取扱いについては、「電力不足に伴う労働基準法の運用について」(昭和26年10月11日付け基発第696号。以下「局長通達」という。)の第1の1において示されているところである。
今般、平成23年東北地方太平洋沖地震により電力会社の電力供給設備に大きな被害が出ていること等から、不測の大規模停電を防止するため、電力会社において地域ごとの計画停電が行われている。この場合における局長通達の取扱いは下記のとおりであるので、了知されたい。」
として,
「計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しない」
としたものの,18日には「平成23年東北地方太平洋沖地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第1版)」として,
「Q2 従来、労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づき、使用者の責に帰すべき休業のみならず、天災地変等の不可抗力による休業について休業中の時間についての賃金、手当等を支払うこととしている企業が、今般の計画停電に伴う休業について、休業中の時間についての賃金、手当等を支払わないとすることは、適法なのでしょうか。
A2 労働契約や労働協約、就業規則、労使慣行に基づき従来支払われてきた賃金、手当等を、今般の計画停電に伴う休業については支払わないとすることは、労働条件の不利益変更に該当します。
このため、労働者との合意など、労働契約や労働協約、就業規則等のそれぞれについての適法な変更手続をとらずに、賃金、手当等の取扱いを変更する(支払わないこととする)ことはできません。」
と,上記課長通知とは結論において一見矛盾するようなことを述べるに至っている.

この3日間の間に関係者がいろいろ働きかけをした結果,このようなQ&A文書が公表された模様.

就業規則(労働条件)不利益変更法理は,秋北バス事件(最大判昭和43年12月25日民集22巻13号3459頁)で示され,最近ではこれを適用して変更の正当性を否定した事例としてみちのく銀行事件(最判平成12年9月7日)がある.就業規則(労働条件)不利益変更法理は経済状況の変化に伴う労働条件(端的には賃金)の柔軟な変更を難しくするという弊害があるため,撤廃や緩和をすべきだという議論がこれまで多かったけれど,仮に就業規則(労働条件)不利益変更法理が存在しないとすれれば,賃金以外のあらゆる労働条件についても任意に変更ができてしまい,過酷な結果が生じる.今回の厚労省の見解は,いくぶん技巧的ではあるものの,この法理を活用することで妥当な結果にたどり着いたものということができよう.

端的に「休業手当の支払を要する事由は民法536条2項の事由より幅広く認められるので,天災地変はともかく,計画停電はこの事由に含まれるべきである」という見解も取りえるし,ノース・ウエスト航空事件(最判昭和62年7月12日民集41巻5号1283・1350頁)を踏まえるとこの見解が認められる可能性もなくはないと思うけれど,厚労省は過去の局長通知との整合性をとるために上記のような技巧をこらしたと思われる.

計画停電に伴う業務の一時停止や,操業度低減のために雇用縮小が必要となった場合には,雇用調整助成金等の制度もあることだし,休業手当を支払うのがよいということになりそう.

ただ,これが永続するようだと雇い止めといった問題も出てくるので難しい.そもそも,操業していない企業から賃金の支払を受け続けるとなれば経営側からすると納得しがたい話でもある.

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■2011/ 3/27(日)  ビジネス書を読む.

ビジネス書を読むという課題を自らに課しているので,齋藤孝『仕事燃費を3倍アップする!』(講談社,2010年)を図書館の書棚で見つけて借りて,さらっと読んだのだけれど,その後,1か月近く積ん読になってしまっている.

いいことが書いてあると思うのだけれど,十分読み込めていないのと,なかなか実践は難しい.力を抜けばむらが出たり,馬力をかけると息切れしたり.

「もしドラ」の書評で見つけた甲斐莊正晃『女子高生ちえの社長日記 これが、カイシャ!?』(プレジデント社,2007年)も読んでみた.こちらは,企業活動の基本をわかりやすく書いているので,教育・医療・介護や自治体の管理業務など非営利系の仕事に従事している人とか.中高生・大学生や企業での仕事経験が浅い人には参考になると思う.一般企業で1〜2年も仕事をしていれば,特に教わらなくても体得するようなことが書かれている.

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■2011/ 3/22(火)  Japan's Meltdown.

帰宅して郵便受けを開けると,Timeの最新号(18日発売号)が入っていた.

表紙には,軍手をした手にタオルを持ち涙をぬぐう老婆の姿が大写しに.そして,Special Report: JAPAN'S MELTDOWN - Earthquake. Tsunami. Nuclear Disaster. Resilience.と記されている.

直訳すると不謹慎なタイトルになってしまうけれど,内容はまじめな,かつ深い考察に裏打ちされた記事なのだと思う.発災直後からCNNウェブサイトなどで海外からの見え方を確認していただけに,速やかに目を通したいところ.

ところで,地震は天災であり,後は復興と次回への備えを考えることしかない.都心間近の高級住宅街として知られる浦安市でも深刻な被害があって,まだ復旧していないと今日知ったのだけれど,基本的には復旧・復興ということに尽きる.

これに対して,電力不足はいわば人災であり,その原因を求めれば,電源立地に関する東京電力や歴代政権の失策に尽きるということだけれど,犯人探しをしてもしょうがない.こちらには復旧ということがなく,地震を点にたとえれば電力不足は線なので,この先短くても1年間は,地道に,そして強力に需給調整を図っていくしかあるまい.

蛇足ながら,あまり報道されないけれどエレベーターに閉じ込められる被害が多発している.中日新聞ウェブサイト「不安定時の使用控えて 計画停電でエレベーター閉じ込め426件」(22日付)によれば,14日から18日のわずか5日間で426件も発生したとのこと.電車が動かなかったりエレベーターに閉じ込められたりと,災難続きである.さらには生命が脅かされる事態も発生しているから問題だ.

国民一丸となって節電に心がけるということで,オイルショック時に行われた取り組みを思い出す人もいるようだけれど,私はむしろ戦後数年の間に行われた傾斜生産方式の仕組みを思い出す.需要に対して供給が絶対的に不足している状況のもとでは,価格メカニズムを利用するか,そうでなければ,統制経済と呼ばれようとも,政府が電力の割り当てを強力にコントロールしていくしかないのではないか.不完全な計画経済は横流しによる腐敗を生むとして,改革開放前後の中国が引き合いに出されるけれど,電力は貯められないので,そういった意味の横流しは発生しなさそう.

傾斜生産方式では石炭の増産,そのための鉄鋼の増産に資材を集中的に投入するという方式がとられたけれど,今日の電力の割り当てについていえば,医療を含む生命維持が第一順位で,災害救援・復旧がその次,そして水道・ガス事業,郵便,最低限の情報入手と情報発信のための通信・放送,公共交通機関,それに国や地方自治体の管理的業務が次ぐことになると思う.

こうした重要業務に比べれば,一般の製造業などへの電力供給は後回しにならざるを得ない.その結果として職や生活を失うリスクが生じるというのは致しかたないことであり,個人レベルでは生計を切り詰めて耐えるしかないし,社会全体としては社会政策で対処していく必要があるのだと思う.

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■2011/ 3/20(日)  原子力発電の未来

原子力の利用は,運転により核燃料物質中に核分裂生成物が生じたり,強い中性子線を浴びることによりプラント内の材料が放射化することから,運転時・点検時の作業員の被曝,放射性廃棄物の処理,そして事故という3点の問題があって,原子力開発の当初からこれらの問題は解決されずに続いてきた.

この3つの問題のうち事故の危険性については,チェルノブイリ原発事故などを通じてある程度認識の共有が図られており,特に日本では原発の新規立地は難しくなってきているものの,フランスは依然原子力を電源の主軸に据えているほか,最近では米国などを中心に原子力発電の見直しの機運が高まっていた.

原子力発電は,大規模な火力発電と同様に,タービンを駆動させた後の蒸気を水に戻すために大量の冷たい水を必要とするので,日本では海辺に立地するほかない.そうすると,津波の影響を考慮する必要があるというのは道理だ.私も原発の事故の危険性については20年以上憂慮を続けてきたけれど,さすがに冷却機能喪失状態が長時間続くとか,建屋が水素爆発で吹き飛ぶとか,冷却のため海水を放水する必要が生じるというほどの規模の事故は想定していなかった.むしろ地震そのものによる保安設備の損壊とか,災害と関係なくヒューマンエラーによる事故の発生を懸念していた.

こうした矢先のこの事故とあって,原子力発電の新規立地は海外も含め先進国では難しくなってくるのではないか.日本人は身近なリスクが顕在化すると,同種のリスクに対しては相当強い反応を示すという傾向があるので,事故のあった原発の廃炉は技術的に当然として,その他の原発についても漸進的に廃止していくという世論が形成される可能性がある.

一方で,先進国で公害規制・環境規制が強化されると,先進国では退出を余儀なくされるとともに,同様の規制のない発展途上国で類似の工場の建設や鉱山の開発が進められるというのがこれまで繰り返されてきた.原発についても,日米欧や韓国といった先進国では先細りとなっていく中で,中国や発展途上国で建設が進められるのではないかと思って見ている.

高速道路の復旧が次第に進む中で,鉄道の復旧が遅れているのが気がかりだ.

東北本線は東京と盛岡・北海道方面を結ぶ日本の大動脈.東北地方の地理上,東海道本線などと異なり,おおむね内陸部に位置するので,仙台付近を除いては被害は少ないのではないか.現在はこの線区を経由する帯広・札幌・盛岡・青森発着の貨物列車がほとんど運休となってしまっている.旅客運転の再開にはいましばらくの時間がかかるとしても,物流にもたらす影響を考えると,貨物だけでも早期の復旧が望まれる.

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■2011/ 3/17(木)  電力の需給調整を価格メカニズムで.

余震がまだまだ続く中,皆さんお元気でしょうか.

原発事故に加え,計画停電が経済に及ぼす影響は,まことに甚大なものがある.この認識が,金融市場の参加者全体にはまだ十分浸透していない模様.

ところで計画停電は,社会的に重要性の高い用途や人命にかかわるような用途での使用も制限されてしまったり,他方では不要不急の電熱利用なども相当含まれているとおぼしき需要の伸びによって企業のオフィスでの電力利用が割を食ったりと,資源割り当ての方式としては相当問題がある.食料など生活必需品であれば1人1日3合とかいった形での配給制度が機能するとしても,電力のようなものは用途が多様なので個別の必要性を十分勘案して割り当てをするのは難しいし,そもそも配電網の技術上も無理なこと.

そこで,電力の消費に課税することにより,個別の必要性を考慮した削減を図ることが必要ではないか,まずは1kWh当たり10円程度でどうか,などと雑談ベースでしゃべっていたら,折りしも野口悠紀雄氏が「緊急提言:電力需要抑制のために価格メカニズムの活用を」と題して類似のことを提言していることに,夕方帰宅して気づいた.野口氏はハイエクを引用しているけれど,私は環境税の一種であるボーモル・オーツ税の一つの応用として位置づけたい.

電気料金は大口需要家や動力で安く,一般家庭などで高く設定されている.これは,大口需要家に比べれば変圧にかかるコストなどが加算されているという意味もあるし,政策的に,住宅から厚い利益を得ることで中小工場などの生産に対する事実上の補助金としているという内部補助の意味合いもあるのだと理解している.ここに1kWh当たり10円〜20円という課税をぶつければ,需要抑制効果は大きいのではないだろうか.自宅の場合は毎月2〜3千円程度と,さして懐が痛まない一方で,このあたりあまり詳しくないけれど,電炉業界のような電力を大量に消費する産業には退出を迫る効果もあるのではないかと.

そして,税収を当初は復興支援に充て,復興が一段落すれば一般財源に回すとすれば,一石二鳥にも三鳥にもなる(なお税収のごく一部は低所得家庭への電気料金補助に充てる必要がありそうだ).

野口氏は租税法律主義のしばりを指摘して,課税ではなく電気料金としての徴収を提言しているけれど,税率を「1kWh当たり20円を超えない範囲で,需要を供給に一致させるために必要な税率として省令で定めるもの」と法律上に規定しておけば租税法律主義の要請には答えられるのではないかと.それに現下の政治情勢ではかかる法律の国会通過は難しくなさそう(平時にやろうとすると,異論百出で,多大な労力を費やした挙句廃案になったりしそうだけれど).

将来的には,時間帯別税率によりきめ細かく需給調整を行うなど,夢が膨らむ.

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■2011/ 3/13(日)  現況 / 中部電力事件

今回の震災で被害にあわれた方には衷心よりお見舞い申し上げます.

今朝方10時過ぎに何とか帰宅ができて,けがはないものの,風邪をひいたようで何もできない状況.一晩夜明かししただけで体調が悪化してしまうというのは,本格的に被災して避難所などでの暮らしを余儀なくされた場合のことを想像すると参ってしまう.考えてみれば,京都にいたころに,山に入って,壁も天井もないようなところで2〜3泊したことはあったけれど,そのときは十分体調を整えて行ったし,岩の上で休むにしても,夏なので気温は高い上に,防寒・雨よけの対策は万全にしてあったことを思い出す.

今回の教訓はひとまず以下の通り.

「中部電力事件」でウェブを検索してみると,パワーハラスメントに関連した事件(名古屋高判平成19年10月31日 労働判例954号31頁・遺族補償年金等不支給処分取消請求控訴事件,最高裁の判決PDF(控訴人労基署長の控訴を棄却する判決).電力会社に勤務していた被控訴人の夫がうつ病に罹患して自殺したことが業務に起因するとして,被控訴人が控訴人(名古屋南労基署長)に対して,労災保険法に基づき遺族補償年金及び葬祭料の支給請求をしたのに対して控訴人がした不支給処分の取消を命じた原判決を維持した事例.確定)とその原審判決(名古屋地判平成18年5月17日)がたくさん出てくるのだけれど.これは名古屋南労基署長事件と呼ぶべきもの.

判例六法では,「中部電力事件」という通称事件名は別の事件に当てられているのであった.具体的には,電力会社が原発立地予定地について,漁業権を有する漁業協同組合に対し,将来補償金を支払う可能性がある等の前提の下,預託金方式による経済上の支援をしたことにつき,当該意思決定の行為は取締役としての善管注意義務ないしは忠実義務に違反するものでないとした事例(名古屋地判平成10年3月19日判時1652号138頁.確定したかどうか不明).結局会社に経済的損失はなかったのだろうし,判旨は妥当であるとしても,この行為が企業イメージの劣化をもたらしたのだとすれば,経営判断として妥当であったかどうかという点は意見が分かれるところ.

名古屋高決平成8年7月11日判時1588号145頁は,株主代表訴訟において被告取締役側への会社の補助参加を認めなかった事例で,同じ通称事件名が当てられている.この論点については最一小決平成13年1月30日民集55巻1号30頁が最高裁としての判断基準を示している(別事例)が,会社法889条1項は旧商法268条2項と規定ぶりが変わっているので,本決定の先例としての意義が失われていないかが気になるところ.

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■2011/ 3/ 9(水)  慢性的な時間枯渇問題.

世の中ではピークオイル(原油産出量の頂点への到達)とか,IPv4アドレス枯渇とか,古くは温室効果ガスの排出限度への到達とか,いろいろな「枯渇」が叫ばれているけれど.

私の場合はここ3年ほど,慢性的に時間が枯渇.何もする時間がとれない.メールもろくに読めず,郵便物も机の上に積んであったりする状況.ネクタイを締める時間もなければ,穴が開いた靴の替えを買いに行く時間もない.最近「断捨離」というものがはやっているというので,私も学んでみなければならないかもしれない.でもこれ以上何を削ればいいのだろうか.

ケベック州政府の官職の一つで,Directeur de ...というのがあって,訳語に悩む.辞書的には「局長」となりそうだけれど,「庁」に当たる部局の下にある模様なので,局ではおかしい.かといって部長というのもいまひとつ.駐カナダ日本大使館のサイトを調べると,訳語をあてずに原綴のまま表記していることが判明.

日本の役所では「課長」にdirecteurの語をあてているようだけれど,課長をdirecteurというのは(本省の課長なら実際そのぐらいの権限があるにしても)ちょっと違和感がぬぐえない.○○長官という訳をあてようかと思ったものの,directeur généralという職名でないので無理と思った.この官職は,行政機関でありながら,申立てに基づき提出された資料に依拠して審理をして決定を下すという仕事もしていて,しかし争訟的な手続ではないという,日本の登記官にも似た仕事をしているので,それにふさわしい訳語を選ぶことに.

俵万智さんがTwitterを始めたらしいと,新聞掲載の随筆で知る.初tweetは「『ツイッター始めました』と書いてみる 冷やし中華のチラシのように」とのこと.お子さんの近況など読めるのなら興味はあるものの,前述の時間枯渇の状況に照らして,私はTwitterへの参入は見送ることに.

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■2011/ 3/ 6(日)  「厚生年金 非正規へ適用に意欲」への反発

昨晩から今日にかけての政治経済関連のニュースといえば,これ.

菅首相が昨日,「社会保障改革に関する集中検討会議」で,非正規労働者の厚生年金加入について「ほとんど合意できていると思う.事業主の皆さんに理解いただくことに,私なりに全力を挙げてやってみたい」と意欲を示したというニュースなのだけれど.

mixiでは通信社などから配信されたニュースが表示され,そのニュースに関する日記を書くことができて,ニュース記事から当該記事に関する日記の一覧を表示することが簡単にできる.

そこで,試しにこのニュースに関する日記を見てみると,百数十件もあって,その大半がこの施策に強硬に反対するもの.

この会議では,柳沢伯夫元厚生労働相が「税負担の便益から正規労働者になることにちゅうちょがある人もいて,取り組みが難しかった」と説明したという(中国新聞).要は,年金保険料などの負担を免れられることが非正規労働者にとどまる一つのインセンティブになっているとの認識を示した模様.

反対論者たちが,同趣旨の施策が自公政権下の2007年4月に閣議決定されたこと(ただ,その内容ははなはだ不徹底だったし,廃案になった)を知っているのかどうか,日本の国民負担率(国民所得に占める税と社会保険料の割合)がOECD加盟30か国のうち24位で相当低いことを知っているかどうかは疑わしい(カナダやニュージーランドに比べても低い).でも,社会保障の拡充に対する反対がこれほど根強いとなると,日本も将来は米国のようにwinner-take-mostな社会になってしまうのではと暗澹とさせられる.

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■2011/ 3/ 5(土)  101キーボードおぼえがき. / 地上アナログ放送共同受信施設の撤去

Vistaで101キーボード(正確にはテンキーがないのでキー数はもっと少ないのだけれど)を使おうとしたら,意外に厄介だった.

デバイスマネージャでキーボードドライバを変更してもうまくいかない.ウェブ検索したところ同じような経験をした人がたくさんいる模様.

レジストリをいじるという対処法もあるようだけれど,リスクを懸念したのと,後で元のキーボードに戻したときに設定を戻すのが大変そうと思って,Vista/Windows 7におけるキーボードカスタマイズ問題という先人の手記を参考にしつつ,結局,yamyというフリーのソフトをスタートアップで常駐させることに(管理者権限での実行は不要と判明).

ついでにChange Keyというソフトを使ってCaps LockキーとCtrlキーを入れ替える.これは101キー問題とは関係ないのだけれど(最下段がFn Ctrl Alt スペース Alt Ctrl ← → ↓という配列になっていて,左手小指付け根にFnキーが陣取ってしまっている.本当はこの場所ににCtrlキーを持ってきたいものの,それは無理というものなので,次善の策として).

私の場合,!()-[];:,./あたりの記号はタッチタイプ,それ以外の記号はキートップを見て入力しているようで,キートップの表示通りの文字が入力される設定にしてもすぐには指がついていかないけれど,じきに慣れることを期待.

自宅に「地上アナログ放送共同受信施設の撤去のお知らせ」が投函されていた.近くの高層マンションの建設に伴い受信障害が発生していたため,当該マンションの住民の負担で共同受信施設を運営していたものの,地上デジタル放送はおおむね良好に受信できることが確認できたとして当該施設を撤去するということ.自宅は戸建てではないためか当該施設を利用しておらず,当該施設の存在自体知らなかったのだけれど,近隣の戸建て住宅居住者には面倒な話かもしれない.

しかし考えてみると,テレビやマイクロ波通信といった波長の短い電波を利用する仕組みは,有線の放送や通信と異なり,方式上建物等の障害物による影響を避けることが困難であり,その仕組みを利用するか,それとも有線の仕組みを利用するか,いずれも利用しないかは住民の自由に委ねられている.特にラジオが受信できるのであれば,テレビが受信できなくても災害や時事に関する情報の入手可能性に欠けるところはない.放送事業者が送信施設の充実化に努めるのは望ましいことだけれど,建物等に起因して難視聴が発生したとして土地の利用者が長期間にわたって負担を強制されるという従来の慣例には納得のいかないところがある.

土地の利用に伴い騒音などの公害や日照の侵害が発生するとすれば,人の健康にかかわることでもあるし,近隣の土地の通常の利用に著しい支障をきたすから,補償や防止の措置をとるのは当然だけれど,「テレビ放送を無償で受信できること」は近隣住民の権利には当たらないと思う.

もっというと,「すべての人がテレビ放送を受信できること」は,国の責任で保障すべきものとは思わないし,医療・教育・福祉などと異なり,国民や住民の税金を使うべき分野ではないのではないかとも思うけれど,これは大多数の国民の支持は得られなさそうだ.

昼食に,よもぎうどん.季節限定であるらしい.

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