みしっく今日のひとこと - 2010年11月


■2010/11/27(土)  『脳死・臓器移植の本当の話』

主にこまち号の車内で,小松美彦『脳死・臓器移植の本当の話』(PHP新書,2004年)を読了.

著者の見解は相当先鋭的なものだけれど,救急医や移植医たちを除いては,医学界では脳死臓器移植に対する視線が冷たいのは事実だ.それは,医師は医師の行動原理や誤診の危険性をよく理解しているということ,臓器移植は医療技術として相当未成熟なものでもあるし,にもかかわらず,特に心臓移植などは危険が大きい手術であるということが理由なのだと思う.

臓器摘出時には麻酔をかけるのが一般的とか,脳死判定をやってみて,脳死であると診断されなければ,時間を置いて何度も繰り返すことになるわけだけれど,その中で行われる無呼吸テストは,何度も実施すればそれだけ血中の酸素濃度を低下させ,二酸化炭素濃度を上昇させるので人命への危険が高いというのは本書で初めて知ったこと.

脳死とは「脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止している状態」と定義されるわけだけれど,脳の仕組みからして,生きている身体に対してこれを判定することは,なかなか困難なことに違いない.

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■2010/11/21(日)  遅ればせながら

岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社,2009年)を読んだ.

ビジネス小説というジャンルに入るのだろうか.マネジメントの立場にありながら,自らの働きぶりをもっと改善できるのではないかと感じている人にはぴったりの本.小さな企業などだと社長でもマネジメントの要諦を理解していない人がいるし,ドラッカーのいうマネジャーというのは管理職だけではなく,組織の中で,何らかの創造的な要素を含む仕事をするすべての人を指していると思われるので,私のような立場でも参考になる点が多々あった.

「顧客によって事業は定義される」「企業の目的は顧客の創造である,したがって企業はマーケティングとイノベーションという2つの機能を持つ」「マネジャーに必要な根本的な資質は真摯さである」「職人的な技能それ自体が目的であるかのごとき錯覚を生んではならない」といったドラッカーの引用とか,「『働きがい』は魔法の杖としか思えなかった」といった作中人物の言葉はなかなか含蓄が深い(「顧客」「マーケティング」「マネジャー」という用語はいずれも一般的な意味とは異なる定義で用いられている).

ストーリー展開はともかくとして,経営管理学の世界をかいま見ることができて楽しめた.

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■2010/11/16(火)  判例の捜索 / 公共図書館は究極のコレクターであってほしい.

夜勤明け.始発列車で帰れるかとの淡い期待はかなわず,自宅最寄り駅到着が10時ごろとなったので,近くの図書館に足を伸ばす.

睡眠をとった後,借り出した資料に目を通す.夜勤明けは体調がすぐれないものだけれど,今日はさほどでもなかったので,再度図書館へ.

最高裁の多くの判例は最高裁の編集する民集・刑集といった判例集に登載されているのだけれど,ものによってはこれらに登載されていないものもある.編集委員会が先例的価値等を勘案して登載するかどうか判断するという.同じく最高裁の編集する「集民」という非公刊の判例集もあり,こちらに登載された判例で,先例的価値があるにもかかわらず長らく研究者らに見出されなかったものがあるという話を聞いたことがある(どの判例だったか失念してしまった).現在ではいずれも最高裁のサイトで閲覧できる.

ただ,判例タイムズや判例時報といった民間の判例雑誌のみに掲載された判例は,最高裁のサイトでは閲覧できず,ウェブ検索で探しても見当たらないことがしばしばある.

今回必要になったのは最判平成15年2月21日金融商事判例1180号29頁.区で収集している判例雑誌は判例時報なので,判例時報の別冊総索引を決め打ちで借り出したものの,掲載されていないようだと判明.そこで素直に金融商事判例(という名前の雑誌)の相互貸借を依頼することにした.

1982年に出版された,とある本を読みたいと思ってOPACで調べたところ,区立図書館に所蔵されていることが判明.予約して最寄りの図書館で受け取って読んでいた.

専門書というのではなくて一般書なので,学術的・資料的価値は低いのだけれど,その文献にしか書かれていないと思われることが豊富に書かれているので,この本の主題について調べたいと思う人にとっては絶対的に必要なもの.ベストセラーの購入に比べて貸出実績には寄与しないかもしれないけれど,過去の書籍・雑誌を収集・保存・供用するという機能はぜひ大切にしていってほしいと思う.

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