みしっく今日のひとこと - 2010年3月


■2010/ 3/28(日)  勝間和代氏の金融リテラシー本について,寄付の効用について,およびデフレとエマージング諸国の資産価格高騰について.

勝間和代『勝間和代のお金の学校―サブプライムに負けない金融リテラシー』(日経出版,2009年)にざっと目を通した.

勝間和代氏の本を読んだことはほとんどないのだけれど,氏は基本的に,前向きに努力して生きていくことの大切さを訴えるとともに,ものごとを裏表なく明快に語るというキャラで売っている人だと認識している.なので,魑魅魍魎がうごめく金融の世界を語るのは相当難しいのではと思っていた.

実際,ぱらぱらページを繰ってみると,320ページの分厚い本である割に,内容は薄く,初心者にはおすすめできない本だとわかった.

だいたい,何か未知の大きな分野について解説するときには,いくつかの簡単な例をあげた後,分析の背骨となる理論とか,その分野で典型的な分析の手法を提示して,これを各分野に当てはめていくというのが順当だと思うのだけれど(いわゆる総論から各論に入るパターン),そういった記述の流れにはなっていないし,そのためかどうか,現状分析がはなはだ不徹底.「いまの日本人にはもっと金融リテラシー(金融に関する知識と能力)が必要」という考えには全く同感だけれど,金融リテラシーを高めたい人は,勝間氏ではなく山崎元氏の著述を参考にされた方がよろしいかと思う.

ただ,個別には,対談者の発言も含め,なかなか興味深い指摘と考察が並んでいたので,抜き出してみると,以下の通り.

最近池田信夫氏のブログがつまらなくなったので(単に読む暇がなくなったともいう)読んでいなかったのだけれど,読んでいないうちに,何だか面白いことがあったらしい.いわく,勝間和代氏のためのマクロ経済学入門と題して,勝間氏の菅直人氏への政策提言プレゼンにかみついているのだ.

私は池田氏の立場にくみするものではないけれど,勝間氏の政策提言も相当なんというか…である.

ここ10年ほどの経験からわかったのは,マイルドなインフレを人為的に起こすのは昔の人たちが想像していた以上に難しいということのはずなのだけれど….日銀も,好きでデフレを起こしているわけではないのだけれど….普通の経済状況なら,利下げにより物価が上昇するはずなのだけれど….

もちろん,いまの状況を打開する必要な政策を政府が実施していく上で,中央銀行の独立性が危うくなっているように見える状況が発生するおそれはあるので,そうした場合には政府と中央銀行の間での政策合意を結んで,それに基づく時限的な措置としてそうした政策を実施していくという選択肢はあり得るのだろうけれど.

ところで,マイルドなインフレを人為的に起こそうとか,それ以外の目的とかで,低金利政策をとると,意図していたのとは違う遠く離れた市場でバブルが発生するというのが,ここ2年余りで学んだことだと思う(日本が低金利政策をとったので米国西海岸(だけではないが)で不動産価格が異常に上昇したとか,最終局面では原油などのコモディティが暴騰したとか).リーマン・ショック以来は,日本だけでなく欧米でも低金利で資金を潤沢に供給する政策がとられてきたけれど,最近のエマージング諸国の資産価格の上昇は,これらの資金の流入によるもので(推測),いつか急落に転じるのではないかという気がしてならない.

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■2010/ 3/27(土)  子ども手当法を技術的観点から読んでみる.

いろいろあったけれど,まずは成立してよかったのではないかと.

国民的関心事でありながら,実は条文を読んでいなかったので,これを機会に条文を読んでみた.

第1条に「この法律は、次代の社会を担う子どもの健やかな育ちを支援するために、平成二十二年度における子ども手当の支給について必要な事項を定めるものとする」とあるのは,「子どもの健やかな育ち」を支援するという大きな目的を掲げる割には,内容が2010年度における子ども手当の支給について定めるにとどまるというのがバランスを欠いている感がある(次年度以降はどうするの,とか,子ども手当だけで「子どもの健やかな育ち」の支援として十分なのか,とか).

第2章は支給について定めており特に難解なところはない.第3章は費用の負担について定めており,国と地方の間の綱引きで決まった交付金の割合が定められていて,受給者にとって直接関係はないものの複雑.

第4章が面白い.第19条が「…児童手当等受給資格者に対する子ども手当に関しては、…当該子ども手当の額のうち…児童手当…の額に相当する部分が…児童手当…であるという基本的認識の下に、この章に定めるところによる。」という規定ぶりなのだけれど,「基本的認識」という,日常用語でありながら,権利義務の発生要件を定めたりするのには使いにくい用語が出てくるのが,この法律の制定までの経緯を映していそうで興味深い.

法令の検索をかけてみると,食品安全基本法,次世代育成支援対策推進法,税制改革法にこの用語が見当たるけれど,政策の方向性や基本的理念といったものを定める規定におかれている.本法のような技術的な規定に「基本的認識」が登場する例としては厚生年金保険法第78条の13があり,おそらくこれを下敷きにして今回の子ども手当法の規定も作成されたのではないかと推測している.

それにしても,
「児童手当法の一部を改正する法律
児童手当法(…)の一部を次のように改正する.
題名を次のように改める.
  子ども手当法
目次を次のように改める.
 …
第1条中「児童」を「子ども」に改める.(以下省略)」
というような簡明な形には結局ならず,形式的には児童手当法が併存する(ただし2010年度中は児童手当は支給停止)ことになったわけだ.

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■2010/ 3/25(木)  派遣法改正トピの議論に思う.

mixiの格差社会コミュニティ(掲示板のようなもの)に,派遣法改正に関するトピック(スレッドのようなもの)が立っていて,なかなか興味深い議論が交わされていることを知る.

もともと格差社会問題は派遣法改正よりもはるかに大きなスケールの問題で,このトピックでの議論もそのためにかみ合っておらず荒れてしまったのだけれど,それはそれ.

北海道出身で,おそらくは技術もあるエンジニアとおぼしき方が,失業時代は本当につらかった,低所得の職にありつくのにさえ相当苦労し,1人の枠に50人応募があったところに滑り込んだと述べられていることに,少々衝撃をおぼえた.

財界を代表する組織であるところの日経連(当時)が95年に出した「新時代の日本的経営」という報告書は,私も同時代に接しており,その内容に驚いたのだけれど,その内容通りに事態が進展していくとは,当時の私には予想できなかった(大原社研の日本労働年鑑 第70集 2000年版参照).

いまから考えてみると,経済全体が低成長となった時代に,従来の体制を踏襲していたのではあちこちにひずみが出てくることは明らか.場当たり的な対処はかえって逆効果や不公正を生むことがあるわけで,包括的なパッケージとしての政策転換が必要なのではないか.

たとえば,以下のような政策パッケージはどうだろうか.実現に移すには,政労使の合意が欠かせないし,そのためには強力なイニシアチブが必要.自民党政権にはその力量はないとして,民主党政権にその力量があるかどうか.

柔軟な賃下げを可能にする,というのは,働いている当事者にとってはとても受け入れられない政策なのかもしれない.

でも,労働政策は,賃金以外の労働条件を規制すべきもので,賃金は基本的には自由であるべき(もちろん,不当に低い賃金への規制としての最低賃金が必要なのは,金融の上限金利規制と同様)だというのが,従来からの日本の労働政策の立脚点だと認識しているし,基本的に間違ってはいないと思う.現在の経済状況に見合った賃金で生活できなければ,福祉の施策により生活を守っていくことになるのではないか.

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■2010/ 3/22(月)  迷惑メールフィルター

Becky!用の迷惑メールフィルタープラグインは何を使えばよいのだろう.

長らくBkASPilを使用してきたけれど,このところ開発が止まっていて,精度もいまひとつ(過学習のためだろうか).

一時は「深海魚フィルター」というプラグインが人気になったようなのだけれど,公開停止になっている.シェアウェアとして再公開されているらしいけれど,ちょっと高い….

プロバイダの迷惑メールフィルタリングサービスは利用しているものの,それで迷惑メールとして落とせなかったメールをさらにふるい分けたいので,自前でも迷惑メールフィルタを持つ必要性を感じている.

いっそのこと,迷惑メールフィルタ機能を標準搭載しているThunderbirdへの移行を真剣に考える機会なのかもしれないけれど,既存のメールボックスの中身を移行させるのがやや面倒.どうしたものか.

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■2010/ 3/21(日)  ウェブはバカと暇人のもの,なのだろうか??

中川淳一郎『ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言』(光文社新書,2009年)を読んだ.

著者はとあるニュースサイトの編集者で,ユーザーに受ける記事を執筆してサイトの閲覧数を上げること,荒らしコメントを削除することなどを生業としているが,平均的なネットユーザーは優秀というよりはむしろ凡庸であるため,彼らの集合体であるネットがとにかく気持ち悪く,自分のことを自嘲して「IT小作農」などと呼んだりしているという.

そして,企業側ではネットを活用したマーケティングが熱を帯びて語られ,Web2.0とか,CGM(consumer-generated mediaの略)とかいってもてはやすことをきわめて冷静に批判している.そして,ネットにより「集合知」が実現するというよりは「集合愚」に陥っているとする.

その他にもなかなか興味深い指摘と考察が並んでいたので,抜き出してみると,以下の通り.

でも私からみると,ウェブの当初の使い方であるカタログの閲覧,時事情報の確認,予約・通販などの機能的な使い方以外に,今日では一般ユーザーが作成したコンテンツにも,有用な情報は多く含まれており,こういった仕組みが存在しなかった十数年前に比べればずっと社会生活が便利になったように思う.

インターネットは,嘘を嘘と見抜けない人には利用が難しいといわれるけれど,マスコミだって,あるある大事典捏造事件のように似たような事象はある(これは「虚報」と呼ぶことになっている)ので,どちらが信頼できるかは難しいところ.

著者は指摘していないけれど,コミュニティによって民度というか荒れ具合というか,あるいは集まる情報の質が異なるというのも特徴的なので,この特徴をうまく知って使いこなすことが必要だと思う.Wikipedia(特に英語版)は信頼できることが多い.質問回答サイトは,オウケイウェイヴ系(教えて! gooなど)は良質である反面,Yahoo!知恵袋はどういうわけか愚問・誤答が多いように感じる(しかも,質問が終了していると,誤答を訂正するすべがない).個人ブログは玉石混交だけれど,マイナーな対象物に関心を持った場合,その名称さえわかれば,また,それが一般に情報公開されたものであるならば,検索エンジンを使えば一定量の情報が得られるという仕組みを提供してくれるという点は評価したいところ.

ところで,中期的なウェブの発展の方向としては,モバイルブロードバンドの普及による,地理的にタグ付けされたコンテンツの生成・流通という方向性と,一般消費者向け商品にとどまらず,生産財やその部品を含めた幅広い商品の情報提供と販売(例えば,ある種のねじがふと欲しくなったときに,求めるねじを手に入れるのは現在のところかなり困難な仕事だ)という方向性があるのではないか,と思っている.

こういった発展を阻害する要因としては,セキュリティ脆弱性を突くようなコンテンツの流通を防止できないリスクや,機械的に生成されたコンテンツなどの真にノイジーなコンテンツ(いわゆるスパムブログなど)を評価メカニズムによって排除できないリスクがあると思う.

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■2010/ 3/19(金)  誤字脱字衍字(えんじ).

誤字脱字,という表現はよく使われるものだけれど,もう一つ「衍字」というものがあるのだと知った.

衍字というのは,脱字の反対に,間違って入った余計な文字のことらしい.

誤字といえば,「山口県美袮市」(みねし)なんていう表現は興味深い.うっかり1画筆が滑ってしまったというもの.滋賀県多賀町にあるとされる「妛原」(あけんばら)という通称地名も同類だ.

私の職業がエンジニアだからではないけれど,誤字脱字衍字を見つけるのは結構得意だったりする(というか,意識しないでも目に入ってしまい,気になってしょうがない."neigbor"とか).

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■2010/ 3/14(日)  家具・家電の固定は大事.

たんす・食器戸棚・本棚などの家具,冷蔵庫やテレビなどの家電は,地震の強い揺れで転倒して,居住者に怪我をさせてしまうことが指摘されており(一説によると阪神・淡路大震災による死者の1割が家具による圧死だという),転倒防止対策が必要だ.

突っ張り棒などは,やらないよりはまし程度のものであり,本格対処としては,L字金具を使うなどして壁に固定することが必要となる(床に固定するという方法もあるけれど,住宅向きではない).

いくつかの自治体では,高齢者世帯などを対象に家具転倒防止金具等取付事業を実施しているとのこと.しかし取り組みには市区町村によって濃淡があり,中にはあっせん・支援や器具の無料配布にとどまる自治体もある.一方では建物の耐震化や延焼防止による災害に強い街づくりといった大がかりな事業もあるものの,家具の転倒防止というのも細かいけれど大事な事業に違いない.こうした取り組みをもっと広げたいものだと思う.

集合住宅の場合,戸境壁や耐力壁に固定のための金具を打ち込むことはできないし,間仕切壁には下地補強が必要だったりとハードルが高いけれど,建物自体の耐震性が高くても家具の転倒の被害にあっては困るので,できれば入居前に十分調査・対処をしておきたいと思う.「ブロードバンド対応」を売り文句にするだけでなく,「家具固定に対応」という物件を評価していきたいところ.

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■2010/ 3/13(土)  超高層マンション、暮らしてみれば…

加藤純子『超高層マンション、暮らしてみれば……』(講談社,2002年)を読んだ.

著者が家族とともに1988年春に入居して以来,14年間を過ごした超高層マンションでの生活を語る本.著者は児童文学作家ということだけれど,文章のスタイルはよしもとばななを想起させるような軽いエッセーのようなもの.

いまでこそ「湾岸戦争」などといわれるほど東京湾沿いを中心に供給物件数も多数に上り,神奈川県や埼玉県のほか首都圏以外の都市でも多く建設されるようになって一般化した超高層マンションだけれど,存在自体が稀少だった1988年時点で入居するというのはなかなか大胆なことだったのではないか.

著者は,埼玉県秩父市に生まれ,二子玉川の社宅を振り出しに,弦巻(最寄り駅は桜新町駅)のマンションに引っ越した後,子どもの成長とともに手狭になったので,江東区に立地する新築超高層マンションの20階に設けられた百平米を超える住戸を購入して入居したという.

住宅関連の情報として,売る側の論理で書かれたものが多く流されている昨今,この本は,設備・構造・意匠にわたる技術的な詳細や,資金面のことは一切語られていないとはいえ,暮らす側の実感をつづる貴重な体験記となっている.あえて身元を明らかにして住まいについて語った著者と家族の勇気には敬意を表したい.

全編を通読してみて感じたのは,超高層というのはやはり住まいには向いていないらしいということ.地表から離れているから当然ではあるけれど,とにかく風が強いということ.音については,近隣住戸からの騒音は意外に気にならないようで,むしろ地上で発生する騒音がみな集中するため,うるさいということが書かれている.また,高いところに住んでいると地表に降りることが減ってしまって,運動不足になったりとか.あとは,一般的なマンションと同じように,採光・通風や収納に留意する必要があるとのこと.ただ,眺望はすばらしいという.

地価の高い東京では贅沢なことかもしれないけれど,私は8階建て程度のマンションに住みたいもの.オフィスは利便性の高い場所に立地する必要上,敷地が少なくてすむという超高層建築の利点が際立つと思うのだけれど,住宅で超高層というのは,現時点および近い将来においては欠点の方が多いように思う.

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■2010/ 3/ 8(月)  24時間ニュースチャンネル….

NHK BS1では,毎日0時から23時まで,毎時0分から10分程度,ニュースを放送しているということを知った.

Wikipediaによれば,これは2004年以来「24時間ニュースチャンネル化構想」の第一歩として実施してきているとのこと.

深夜から朝にかけての時間帯など,そんなにニュースがあるのだろうかとか,見る時間がある人はいるのだろうかという点は純粋に知りたいのだけれど,米国のCNNも常時ニュースを放映していることからすると,それなりにニーズはあるのかもしれない.しかしスタッフは毎日夜勤で大変に違いない.

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■2010/ 3/ 7(日)  さようなら,カルフール.

カルフールがあさっていっぱいで営業終了する.カルフールはフランスのスーパーマーケットチェーンで,日本進出の試みが挫折に終わったということになる.輸入食品などは充実しており,ことにカルフールブランド商品や"Reflets de France"(ルフレ・ド・フランス)ブランド商品などは普段着の味を普段づかいの値段で提供してくれていたので,私の日常の生活範囲には出店していないものの,南町田店・幕張店にときおり足を運んで利用していたもの(写真 1 - Confiture Reines Claudesや,Asperges vertesの文字が見える).総菜コーナーに並べられたローストチキンも魅力だった(日本の普通のスーパーの商品とは,なぜか味が違う).

現存店舗は店名を「イオン」に変更して営業を続けるらしい.ローストチキンも続けるというけれど,カルフール商品やルフレ商品はなくなる模様なので,さびしいものだ.


写真 1

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