みしっく今日のひとこと - 2009年7月


■2009/ 7/28(火)  取引停止中の某社が一審敗訴

教職員組合の連合体である団体Xが,ホテルを経営する会社Yとの間で,施設の使用契約と宿泊契約を締結したが,Yが契約解除を通知.Xは解除を拒み,裁判所に履行を求める仮処分を申し立てて認められた.しかしYは履行を拒んだため,XはYおよびYの役員に対し,損害賠償等を求める訴訟を提起した.

と見ると,判決文はまだ目にすることができていないのだけれど,ごく普通の企業間の契約履行を巡る争いとそれほど変わるところがなさそうに思える.

企業対企業の取引では,権限のある者が作成した契約書や注文請書が存在する場合,それは相当の重みをもつものと評価しなければならず,通常はその内容通りの合意が成立したと考えられる.

そして,いったん契約を締結したのであれば,その履行を拒むには,交渉力に劣る者を保護するための法律である消費者契約法や下請法に反するとか,その他の強行法規に反するとか,だまされて契約してしまったとか,反対給付が未履行とか,履行の請求が信義則違反に当たる(?)とか,とにかく何かもっともな理由が必要.そして,それは裁判所を納得させられるような理由でなければならない.あるいは,法律上必ずしも認められる理由ではないけれど,自社が経営破たんして履行ができないとか.そういったもっともな理由がなければ,何とか交渉して解約の合意を取りつけなけるほかない.そうでないと,経済社会は成り立たない.

今回についていうと,ホテル側の持ち出した理由は相当苦しい言い訳だけれど,100%言いがかりというわけではなくて,私が裁判官なら,3%程度はホテル側を勝たせてもいいかなと思っていたので,仮処分申立ての審理を注視していたところ.しかし,仮処分命令が出ても従わないというのは,蛮勇というか何というか….

ということで,事件以来Y社の利用を差し控えていたところ,今日,Y社敗訴の一審判決が出た(河北新報の記事).被告らの今後の対応によって,今後の取引を検討したい.

日清食品チルドの「夏の冷たいトマトのラーメン」にはまってしまって,しばしば買い求めている.

普通のラーメンと違って,麺はゆでてから水で冷やし,水で溶いた冷たいスープに入れて具を載せて食べる.あまりメジャーではない商品のようで,近所では一部のスーパーにしか並んでいない.

トマト味の,こくのあるスープがおいしい.このスープを水で溶いてご飯にかけてもおいしい.

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■2009/ 7/26(日)  クレジットカード番号の流出

アリコジャパンからのクレジットカード番号等の流出事件について.

事件を受けて一部閣僚や一部新聞の社説は「法制度の不備が問題」「厳罰化などの議論が必要」と言っているけれど,そうなのだろうか?

一般に,ある結果を達成するためには,刑罰で抑止する(刑法がその代表例)とか,許認可の対象にして抑止体制を整備させる(銀行法がその代表例)とかいう方法もあるけれど,セキュアな仕組みを採用する(ドアのロックがその代表例)という方法もある.

どれか一種の方法に偏りすぎると息が詰まってしまうけれど,クレジットカードの不正使用問題は,クレジットカードという仕組み全体がセキュリティに関して配慮不足なのが一番の原因ではないか.カード番号・有効期限・氏名で買い物ができてしまうというのは,認証の方法としては弱すぎる.最近表面化した,有効なクレジットカード番号を計算によりはじき出して不正利用する手口などは,厳罰化で情報流出を食い止めたとしても,そもそも防げない.カード裏面のセキュリティコードを入力させるという手法も一部で採用されていて,一歩前進ではあるけれど,抜本的な解決策ではない.厳罰化を議論する前に,まずは仕組みのセキュア化を議論する必要があるのではないかと思う.

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■2009/ 7/25(土)  コモディティ化の予感

コモディティ化とは,「所定の製品カテゴリー中において、メーカー(製造元企業)ごとの差・違いが不明瞭化したり、なくなること。」(Wikipedia「コモディティ化」を引用).

ここ20年ほどで,PCはメーカーごとの相違が感じられなくなってきている.その中で中心価格帯もゆるやかに下落してきている(価格対性能比の話は置いておいて,純粋に価格のみを観察することにする).

一方で白物家電では差別化戦略がとられることが多く,とりわけ炊飯器などは,付加価値競争により価格低下圧力によく耐えている.

テレビの世界には疎いのだけれど,最近は液晶テレビなどの薄型テレビが一般化してきており,その機種選択も,機能・性能というより価格が主な決め手になりつつある模様.そこで,この先1年か2年で,薄型テレビもコモディティ化するのか,それとも新機能の搭載などで差別化に成功するのかが知りたい.液晶・PDPパネルの原価が下落するのかも興味があるところ.

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■2009/ 7/15(水)  インフレといえば.

インフレといえば,国債の特殊なタイプとして,元利支払額が物価に連動する「物価連動国債」というものがある.

でも,この物価連動国債というものは,機関投資家向けのみに発行していて,昨秋以来需要が低迷している.

一方,一般の個人投資家になじみ深い個人向け国債も,このところの低金利を映して人気がない(10年物は直近の市場金利を反映する変動金利型だから,足元の金利が低いからといって購入を見送るのは変な話なのだけれど).

となると,個人向け物価連動国債の新規発行という解があるのではないだろうか.

そうつぶやいてみると,いやいや物価連動国債の償還額が発行時の元本を上回った場合の差額は利子所得となり,しかも源泉徴収の対象となるので,制度上・実務上実現は難しいという話になるのだけれど,もっと国債の消化が難しくなったら,細かい税制上のハードルは整理されるのではないかと思う.

途中換金のあり方や元本保証の要否,スプレッドなどの商品性に検討事項はあるけれど,やってみたら案外人気が出たりして.

なお,物価はCPI(消費者物価指数)に代表されるのだけれど,1年〜2年といった短いスパンで物価が上昇するといった見通しは持っていないことを念押ししておきたい.

@ITのWindows Vistaのエクスプローラにおける自動フォルダ・タイプ設定を無効にするを読んでやってみた.いい感じ.

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■2009/ 7/ 6(月)  インフレの予感

百年に一度という市場の激動は,暮らしに大きな爪あとを残した.勤め口が減って仕事がなくなるというのは,当事者にとって本当に苦しいことだろうと思う.失業経験のない私には,その大変さがどれだけ理解できているかわからないものの.

この市場の激動の原因をたどれば10年以上前にさかのぼることになるけれど.次の激動は,日本の政府債務が持続不可能なレベルに達することにより準備されているのではないだろうか.仕事がないのは困るが,度を越したインフレも困る.

前回の衆院選(2005年)で,自民党は2011年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を均衡させることを公約としていた.基礎的財政収支が均衡しているというのは,国債などの元利支払を除く毎年の支出が,税収などの毎年の収入でまかなわれていること.この場合,この年の債務の増加は利払い分だけであり,利子率と経済成長率が同じであれば公債の対GDP比は一定となる(以上の定義はWikipediaを引用,一部改変).しかし,現状ではこの公約は達成困難となってしまった.

国と地方を含めた一般政府債務残高の対GDP比率は170%に達していて,主要先進国の中で最も高い.現在のところ,これに起因するインフレや金利上昇といった市場の動きは生じていないけれど,実質成長率の回復が見込めないという条件の下,5年・10年というスパンで見るとどうなるだろうか.

何をおいてもプライマリーバランスの均衡を達成すべきというつもりはないけれど,財政の問題は衆院選に向けてもっと議論されてもいいのではないかと思う.

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■2009/ 7/ 4(土)  商標に悩む - または,うどんすきと大徳寺麩について.

うどんすき,と聞いて,読者諸兄姉は何を想像されるだろうか.

特許庁に商標登録を出願して認められると,出願時に指定した商品・役務やそれと類似の商品・役務について,他者による当該商標の使用を禁止する権利が生じる.

そこで,各企業は自社の商品・役務の名称やロゴマークなどをせっせと登録しようとするし,時には使用するあてもない名称の登録を出願して,それが明るみに出て耳目を集めることもある.

そんな状況のもと発生したのが「杵屋うどんすき事件」.株式会社美々卯が「うどんすき」の名称を変体仮名などを交えて構成した商標につき,「他類に属しない食料品及び加味品」などを指定商品として登録を受けていたところ,とある会社が「杵屋うどんすき」の商標につき,「うどんめん、うどんめんを主材にした加工食料品」を指定商品として出願し登録を受けた.そこで美々卯が「杵屋うどんすき」の商標登録を無効とする旨,特許庁に審判を請求したが認められず,東京高裁に出訴したもの.

高裁は,「うどんすき」は取引者・需要者に「うどんを主材料とし魚介類、鶏肉、野菜類等の各種の具を合わせて食べる鍋料理」の一般的名称として認識されているとして美々卯の請求を棄却した(東京高判平成9年11月27日,最高裁もこの結論を維持(最判平成10年12月17日)).

よって,美々卯以外の者が自己の提供する商品について「うどんすき」の名称を用いたとしても商標権侵害の問題は生じないことになる.美々卯は自社ホームページで「うどんすきは美々卯の登録商標です.」などと記載しているものの,法的に意味のない記載により競合他社による名称の使用を抑止しようとすることには違和感を覚える需要者もいるのではないだろうか.

裁判には至っていないものの,例えば「メールマガジン」という名称は「発信者が定期的にメールで情報を流し、読みたい人が講読するようなメールの配信の一形態」を指す普通名称となっており,商標権者以外による使用について商標権侵害の問題は生じないと思われる.同種の例は他にもあり,Wikipediaの「商標の普通名称化」の記事に詳述されている.

しかしながら,美々卯のうどんすきは,飲み放題を付けると少々高額になってしまい忘年会などで利用するのが厳しいので,まだ味わったことがない.杵屋でうどんすきが食べられるのかどうかも定かでない.

うどんすきについてはこのように,普通名称となっており誰が使っても問題ない状況だけれど,「大徳寺麩」についてはどうだろうか.

大徳寺といえば京都の有名な臨済宗の寺院.大徳寺麩というのは,生麩を揚げたもので,精進料理などに使われる.

この大徳寺麩について,商標権を主張して他者の使用を阻止しようとしている会社があるのだけれど,どうなのだろうと思う.

料理界では,当たり前のようにレシピに「大徳寺麩」として掲載されることもあれば,一部では「利休麩」という代替案が使用されることもある状況.

個人的には,普通名称化していると認定して差し支えないと思うのだけれど,争いごとを好まない麩屋さんは,自らの製品に「大徳寺麩」の名称を用いることを躊躇してしまうのではないかと思う.

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■2009/ 7/ 1(水)  都議選2009

いよいよ東京都議選の告示まであと2日となった.

地方選挙は争点がわかりにくいのか,低い投票率に終わることが多い.特に都議選は前回43.99%と低迷していることもあり,投票推進活動が求められるもの.

YouTubeやニコニコ動画では,一部の投稿者が都議選祭りと銘打って大量の動画をアップロードしている模様.政治的な立場の違いはともかく,都議選への関心を高めるという点には全く賛成したい.

私はというと,住宅・少子化対策・公共交通の3つの分野で,これまでの都政の枠を超えた政策の実現が都民にとって重要度の高いものなのではないかと思う.特に住宅や公共交通という分野では,それぞれ,公的賃貸住宅の量的充実と,混雑率の高い路線について鉄道事業者任せでなく公的投資による混雑緩和や大胆な手法による混雑平準化への取り組みを求めたい.老人福祉などの分野も含め,土地が手に入りにくいことを理由にして投資を抑えるようなのはいかがなものかと思う.各政党のマニフェストや政策をこれらの観点で比較検討していきたい.新銀行東京問題への姿勢も考慮に入れたいところ.

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