みしっく今日のひとこと - 2006年8月


■2006/ 8/28(月)  半熟味付卵で考え込む.

出張からの帰宅途中にいつも春菊天そばを頼む店があるのだけれど,最近は心なしか売り切れが多い気がする.今日も春菊天は売り切れていたので,カレー屋さんにフォールバックすることに.

このカレー屋さんは,シンプルなカレー(ソースは3種類から選ぶ)にトッピングを追加していき,好みに応じて生野菜サラダなどを追加注文するというシステム.これまでは野菜の揚げたのとか鶏唐揚げを載せたカレーを注文していたのだけれど,今回は半熟味付卵というのを頼んでみた.半熟味付卵といえば,煮玉子などとも呼ばれ,最近,ラーメンの具として普及してきているらしい食べ物.いままで口にしたことがほとんどなかったのだけれど,ラーメンを好む先輩の日記で読んで興味を持っていて,機会があれば試してみたいと思っていた.

黄身はとろみを残しつつ煮汁の味はしっかり付いていて,チーズのような濃厚な味わい.白身は固ゆでで,外側がしょうゆ色に薄く染まっている.

豆腐は時折うちでも煮るのだけれど,卵を煮たことはない.食材原価の低い庶民的な食べ物だけれど,数個程度の規模で作るのは手間が割に合わなさそうで,その意味ではなかなか貴重なものだ.これを,ひと手間かけてアップマーケットでも通用する料理に仕立て上げる方法があったらおもしろそうだ,と,帰りの地下鉄の中でしばし考え込んでしまった.

いろいろ候補を出しては没にして,結局たどり着いた中間解はというと,煮玉子の中華風サラダ.

作り方は,半割りにした煮玉子を細切り大根と戻したとさかのりに載せ,ごま油を香り付けにしたヴィネグレットに中国の香辛料などをほんの少し混ぜ込んだのを回しかける.

細切り大根といえば刺身のつまとしてありふれているから,日本人にはがっかりされそうだけれど,欧米の創作料理店で出したら案外人気が出るかもしれない,なんて思ってしまった.

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■2006/ 8/23(水)  匿名ウィキペディアンな夕べ

磯崎氏が「Wikipedia の法律関係の記事には出典の記述が不足している」という意味の指摘をしておられたのに,まったく同感する.それで私の場合,条文または判例の表現は極力そのまま書き写すようにしている.でも深い解説が必要になるときはそれなりにいろいろ当たってきちんと書かなければと思う.

昨日は既存記事に,既存の内容を生かしつつ全面的修正を施そうと思ったら,相当時間を費やしてしまった.今日は,既存記事に判例の引用を1個追加,リダイレクト記事を1個作成,小さな新規記事を1個作成.

作成した新規記事について「リンク元」を表示してみたら,すでに他の数個の記事からリンクを張られていることに気づき,少々驚く.いわゆる赤リンク(とりあえずリンクだけ作成しておき記事は他の人が後日作成することに期待するというもの)にしてあったのだと.

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■2006/ 8/21(月)  「間接損害」…三国屋建設の見解について

今回の停電を引き起こした三国屋建設が今回の接触事故による弊社の賠償責任についてと題する文書で,「当社は間接的な損害について賠償しない」と宣言している件について.

今日ちょっと判例を調べられていないのだけれど,過失によりクレーンを送電線に接触させたら,停電が発生した.停電により電車が止まったりダイヤが乱れたりした.工場の機械が停止して生産高が落ちた.あるいは操業維持のため非常用発電機を起動したので燃料費や保守費が発生した.従業員の出社が遅れたが遅刻部分について賃金カットをすることができなかった.これらの事実の経過に相当因果関係の中断を認めるのは困難で,直接に物的損害を被っていない者の営業損害その他の経済損害についても,船舶の運航との間に相当因果関係を認めることができるのだと思う.

損害賠償の範囲については民法416条が類推適用されるという判例があり,通常生ずべき損害についてはすべて賠償を認めるのに対し,特別の事情によって生じた損害については当事者に予見可能性があったときのみ賠償を認めるとされるけれど,停電により熱帯魚が死んでしまったといった極端な場合はともかく,交通事故の被害者の近親者が外国に居住または滞在している場合において,看護等のため被害者のもとに往復した旅費を通常生ずべき損害とした事例(最判昭49・4・25民集28・3・447)があるように,通常生ずべき損害は案外幅広く認定されている模様.

直接の人的・物的損害に比べ,間接的な損害については損害額の立証が厳格に求められるという側面はあるかもしれないけれど,少なくとも「間接的な損害」だから賠償義務がないといった主張は同社独自の見解に過ぎないといえる.

この事件について当事者が支払う意思を見せないのであれば,当事者の資産の散逸を防止しつつ裁判所の判断を仰ぐのがよさそうだと思う.

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■2006/ 8/18(金)  ICチップ不良

ICチップ不良で交換することになったクレジットカード.返送用封筒が「ご返送のお願い」と題する書面とともに送られてきた.利用できなかったICカードの検証をするため,ICチップは切断せずに,磁気ストライプ部分のみに切り込みを入れて「情報ネットワーク部 ICカード検証担当」あてに返送してほしいとのことで,依頼文は「お客様各位」から「以上」に至るまでの全文があらかじめ印刷されている.

顧客対応用の既成の印刷物があってフローが回っているところを見ると,ある程度の頻度でICチップ不良が発生しているのではないかと.

別便で新しいカードも届き,スムーズに移行を完了.

夕食に冬瓜を煮る.冬瓜をゆでこぼし,かつお節を切らしていたので,昆布だけでだしをとって,淡口しょうゆを加えて味を染ませる.

普段はそのまま食卓に運んでしまうのだけれど,冷蔵庫に練りごまが眠っているので,新たな試みとしてごまだれを調合して冬瓜にかけてみたら,なかなかよかった.

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■2006/ 8/17(木)  銅版画に興味を持つ.

日本の版画は,浮世絵などの江戸版画が世界的に有名.京版画も風景画などに味わいがある.

で,私が一番親しみを持つものは,銅版画.古い本の挿絵などによく使われている.物語の一場面を示す絵とか,風景画,自然科学の分野の実験説明図にも使われていたと記憶している.現代の銅版画は多様な技法の可能性を追求している感じだけれど,私はこうした古い銅版画が好きだ.作家としては,デューラーとかレンブラント.

それで,デューラーの有名な作品「メランコリアI」でもプリンタで刷ってみようかと思ってウェブでダウンロードしてみたら,かなり細密に描き込まれていて,画素数が少ない画像では細部がつぶれてしまっていることに気づく.2196×2835ピクセルのものが入手できたので,それを A4 縦で印刷して,額に入れて部屋に飾ってみる.

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■2006/ 8/16(水)  徒歩で暴走…

北海道には徒歩暴走族なるものがあるらしいと知る.「派手な刺繍が入った特攻服を着て、大声を出しながら街を闊歩する」のだという.

徒歩ならば環境にやさしいし,危険な運転で交通に支障を生じさせたりもしないものの,一般市民にとってはやはり迷惑.6月に,このグループのメンバーが顔見知りにけがをさせたとして傷害の疑いで逮捕されたというニュースが報じられたもの.

何より「珍走団」の上を行く新鮮なネーミングに,感動してしまったのだけれど,中学生高校生のみなさんには,徒歩暴走(?)などに迷うことなく,もっと別の方向で創造性を生かして学園生活を送ってほしいというのが正直なところ.「特攻服を着て大声を出しながら川沿いのランニングコースでジョギングをする」などに切り替えれば,一般市民も温かく見守ってくれるに違いない.服装が多少世の中の常識からはみ出ているとしても,それは表現の自由として尊重されるのだと思う.

ところで,傷害罪のように刑法に触れる行為をすればともかく,それに至らない場合は何罪に問われるのか.

北海道暴走族の根絶等に関する条例は,自動車等の危険な運転を共同してする行為を取り締まるものだから,徒歩の場合は適用がない.ならば軽犯罪法?と一瞬思ったものの,軽犯罪法上の粗野乱暴行為というのは,公共の会堂等で入場者に対してするものか,汽車等の中で乗客に対してするもののどちらかに限られるのでやはり適用がなさそう.静穏妨害というのも,繁華街ではやや無理がある.酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律は,道路・公園などでする粗野または乱暴な言動に幅広く適用があるものの,行為者が酔っ払いでなければならない.

みそしる氏は暴力行為等処罰ニ関スル法律が適用しやすそうだと述べておられるものの,条文を読む限り,法定刑も考え合わせると,このような場合は相当の人数(地下街などなら20人程度か)でした場合でなければ適用を控えたい感じ.

北海道の場合は,公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例が一番ストレートに適用されるのではないかと思う.構成要件は「道路、公園、広場、駅、興行場、飲食店その他の公共の場所又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物において、多数でうろつき、又はたむろして、通行人、入場者、乗客等の公衆に対し、いいがかりをつけ、すごむ等不安を覚えさせるような言動をする」ことで,法定刑は10万円以下の罰金又は拘留若しくは科料.多くの都道府県に類似の条例がある.類似の条例が見当たらない場合に限って前出の暴力行為等処罰ニ関スル法律の適用を求めることになるのではないかと思う.

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■2006/ 8/15(火)  電気系でない筆者にとっては新鮮.

昨日の東京電力の事故とは直接関係ないのだけれど.

負荷装置を用意し,電源装置に接続して電力の供給を受けるようにする.負荷量を上昇させると,供給電圧は低下する.

ここまでは理屈だけでなくて感覚的に知っていたのだけれど.

商用電力の場合,電圧だけでなくて周波数が低下してしまうというのも大きな問題なのだと知る.それは,発電機が系統と同期して運転されるものだから,のようだ.逆に,負荷が軽くなれば周波数が上昇する.発電機の系統への組み込み・脱落によっても同様の事象が発生するらしい.それで,ガバナフリー運転を行っている発電機の出力余力によって周波数変動を抑制することができ,とりわけ火力発電に比べて水力発電は,出力を柔軟に変化させられるので,この用途に適しているらしい.

実はこのあたりの話が,6年ほど前に北海道で風力発電の設置を抑制する方向の話の理由づけになっていた模様.

発電方式を,電力供給の安定性といった面から見ていくと,もっとも性質のよいのがダム式水力,次いで流れ込み式水力,ガスタービン火力,蒸気式火力,最後が風力発電・地熱発電・原子力発電といったところだろうか.

でも,最近はインバータを利用する電動機が普及しているようだし,電子機器は直流負荷なので周波数・電圧の変動に寛大なものが多いし,電気時計などとんと目にしないことを考えると,周波数変動はあまり気にしなくてよくなったのかも.

携帯版ホームページを久方ぶりに修正.列車運行情報ページへのリンクを付けたり,Google 窓と Wikipedia 窓を新設したり.Google はシフト JIS でも OK だけれど,Wikipedia は UTF-8 でないと受け付けてくれなかったので,対応のためいろいろ変更.

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■2006/ 8/14(月)  中古家電という選択肢.

小型の液晶テレビと,HDD/DVD レコーダが欲しかったものの,値段の面で躊躇していたのだけれど.

たとえばソフマップなどで中古品を手に入れるというのもありかもしれない,と気づいた.

利用しているクレジットカードが,磁気ストライプ部分での取引は問題ないものの,ICリーダを備える店舗でのみ利用できない事象が複数回発生したため,カードの再発行をしてもらうことになった(ICリーダを備える店舗ではIC付きカードの磁気ストライプ部分での取引はできないようなので,お店の人に大変手間をとらせてしまう).

■故障対応履歴

再発行に伴いカード番号が変わるため,プロバイダなどでの定期的支払がある場合はユーザーから手続をする必要があるかどうか調べてくれるとのことで,定期的支払をしている先のサービス名を伝えたところ,某マイナーなサービス1件を除き,他はすべてカード会社から連絡が行くため問題ないとのことだった.

接触型ICカードは,磁気カードに比べてセキュリティが高いというメリットがある反面,接触不良などによる故障率が高いのかもしれない(身近に磁石があまりないことも手伝ってか,磁気カードの動作不良は経験したことがない).

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■2006/ 8/10(木)  やっと好況の波が…?

派遣脱出が始まった 大求人の波に乗り遅れるな(AERA).2か月ほど前の記事の模様.キャリアアップの機会や休暇制度が保障された正社員として働ける口が広がったのであれば,素直に歓迎すべきことなのだと思う.ただ,すでに正社員としての職を得ている人も含め,社会全体としては賃金水準が物価を上回って上昇することは考えにくいのだろうなと.

引越し計画(押上あたりが第一候補)は,首都機能移転計画と同様に挫折を余儀なくされているのだけれど.

先日,転居時の届出先一覧を作成していて,郵便貯金の届出住所が古いままであることに気づき,住所変更を届け出てきた.

郵貯はいまだに通帳の副印鑑制度を廃止していないため,メインには使えないとの判断を数年前に下して以来ほとんど取引をしておらず,通帳もそのままになっていたもの.

併せて改印もしたところ,通帳が新しくなった.従来は独特の横書き縦開きの様式だったのが,民間金融機関と同様の横開きの様式に.1冊当たりの入出金明細の記載可能行数も増加した.

セキュリティ水準が向上するまでメインには使えないけれど,全国どこに行っても窓口があって同一水準のサービスが受けられるし,民間と違って取引店変更や支店合併に伴う口座番号の変更が発生しなさそうだというメリットがあるのも事実.口座の永続性を要求される用途に限定して細く長く使い続けることになるかもしれないと思った.

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■2006/ 8/10(木)  ポイントの世界.

小売業やサービス業の企業が販売促進のために発行するポイント.ここ半年から1年の間にその世界は激変していると聞いていたのだけれど,日経トレンディの今月発売号の特集を読んで改めてその複雑な構図に驚く.一部では「企業通貨」などという大仰な呼び名を普及させようとする向きもあるらしい.JAL と JR 東日本がそれぞれ他社とポイントを介する提携を積極的に進めているのが,この世界の激変の大きな原因となっている模様.

企業の側にとっては,どんなサービスで消費者に訴求するか,どの企業と手を組むかなど,思案のしどころなのだと思う.ただ,家電量販店のポイントサービスを除き,金額で見れば規模は小さいはず.消費者の立場からすれば,あえていろいろ加入するメリットはそれほどないかもしれない.

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■2006/ 8/ 9(水)  夏風邪

週明けから夏風邪気味.のどが痛い.

今月中は仕事のボリュームが多くなる見込みなので,休養に心がけつつ,だましだまし運転することに.

とりあえず,プリン4個パックを買い込んでおいた.

昼食はモンスーンカフェ.西郷橋を上ったところにある.このあたりはフランス料理店,イタリア料理店などがところどころに店を構える地域で,アパレルショップも多い.このお店は東南アジア料理を出す.店内が広々として雰囲気がよく,スタッフの応対も感じのいいもの.値段も手ごろなので,ランチにもディナーにも向いていそうだと思った.家に帰ってから,実はチェーン店なのだと知る.

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■2006/ 8/ 6(日)  「知らなかった…」2題

風力発電というのは,風のエネルギーを電力に変換する仕組みのこと.

風力発電に利用する風車は,風に押されて回っていて,そのエネルギーを利用しているのだとばかり思っていたのだけれど,実は違うのだと知った.

飛行機は翼が風を受けることにより揚力を発生して空中に浮かんでいるわけだけれど,風力発電もそれと同様なのだと.古くはオランダなどで製粉に利用されていた風車(ドン・キホーテでおなじみですね)でもこの原理がすでに利用されていたのだという.

ただし,飛行機ではエンジンで推力を発生させることにより翼が風を受けるようにしているのに対し,風力発電の場合は,自然に吹いている風により揚力が発生することを利用する.普通のジェット旅客機は揚抗比が20ぐらい.風車の場合は,きわめて細長い翼を利用することにより,揚抗比は100にも達するらしい.当然,翼端の対気速度は,自然の風速をはるかに超える速度になっているのだ(これは,ヘリコプターの翼端の対気速度がヘリコプター自身の速度の数倍になるのと同じこと).

(くだん)という妖怪について.

件 (くだん)とは,「件」の文字通り,人と牛が合わさった怪物で,江戸時代から昭和前半まで西日本を中心に「目撃談」があるのだと知った.「件」は必ず真実を語るのだという.

「依って件の如し」という言い回しから発生したものであるらしい.「したがって前記の通り」ということだから,意訳すれば,「それゆえ,以上のように告げ知らせる/書き記した」という意味なのだと思う.「件」という妖怪の支持者は,この言い回し自体が「前記のことは『件』のごとく真実である」という意味なのだと主張するというけれど,ごくありふれた言い回しからこんな大胆な怪談が創作されたなどというのは愉快な話である.

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■2006/ 8/ 2(火)  土地信託通達の類推適用など

山田煕,中森真紀子共著『信託の税務 相続税対策としての戦略的活用本』ぎょうせい,1997 を読む.

この本は,まさに信託大好きおばちゃん氏が昔、こんな節税対策があったとして書いておられる話に関する本なのだった.

相続税や贈与税の課税上,財産の価額を評価する必要がある.それについて国税庁で定めた基準が財産評価基本通達.不動産や非上場株式の評価方法がよく話題に上るけれど,信託受益権についてもこの通達で評価の基準が定められている.それが財産評価基本通達202.元本の受益者と収益の受益者が同一の場合は,信託受益権の価額はこの通達で信託財産の価額を評価したもの(の合計)であるという再帰的な規定をしていて,これは異論が出ないところ.

それでは,元本の受益者と収益の受益者が異なる場合はどうか.将来予測される資金必要額は個人ごとに異なるから,それに応じたキャッシュフローを生むような資産構成をとるため債券について割引債やストリップス債が用いられるように,信託についても元本と収益の受益権を異なる者に帰属させることが考えられる.

この通達ではこの場合,収益部分については,信託期間中毎年収益が発生し,それを再投資できるはずだと考えて,一定の年利で複利計算する.元本部分は信託財産の価額から収益部分の価額を差し引いて求める.信託期間を長くすれば収益部分が多くなるので,元本の受益権は割安に評価される.したがって元本の受益権のみを贈与すれば相続税対策になる,というのがこの本全体の主旨.信託財産としては,不動産に限らず有価証券でも OK だという.昔は年利8%で計算したので,信託期間を30年とすると収益部分が9割ほどになるという話.そんな無茶な「相続税対策」があっていいものだろうか,と思ってしまう.いまは年利2%で計算するので(評価に使用する利率を毎月改定するせいどになった),同じ期間でも収益部分は55%ほどにしかならず,この手法は使えない(ただ,もし収益率が2%を安定して上回るような財産ならば,先ほどの話とは逆に,収益部分を贈与するという手法が存在し得る気もする.とすると,そもそもこの評価方法自体があまりうまくないということなのか).

「相続税対策」はさておき,この本の他の部分の記述は参考になる.

信託について税法は,おしなべて実質所有者課税の原則を定めており(所得税法では13条に規定.同条但書に限定列挙された信託(「但書信託」と呼ばれる)を除く),受益者が特定している場合は受益者,さもなければ委託者に課税することとしている.

この原則をもっとも厳密に適用し,かつ,具体的な取り扱いを詳細に規定しているのが土地信託通達(土地信託の要件とその所得税等に関する取り扱いは通達別紙に書いてあるので省略する)であるが,土地信託に該当しない不動産の信託,さらには有価証券の信託についてもその性質に反しない限り類推適用されるというのがこの本の筆者の見解.実質所有者課税の原則からすれば納得のいくところだ.

具体的には,土地信託に該当しない不動産の信託について,元本受益権の譲渡は信託財産を構成する物の譲渡とみることができるので,その譲渡益は(不動産の)譲渡所得となる.収益受益権の譲渡は家賃の未収収益つまり債権の譲渡にほかならないが,所得税基本通達33-1により,金銭債権は譲渡所得の基因となる資産に含まれないとされるので,譲渡益が発生した場合は雑所得となる(もっとも収益受益権の譲渡では損失が発生することの方が多いとみられる).受託者が信託財産に属する資産を譲渡した場合は,元本受益権と収益受益権のそれぞれの一部が譲渡されたとみて,それぞれ譲渡所得,雑所得となる.不動産の信託では一定の期間ごとに収益の配当を行うことが多いようだけれど,たとえば家賃収入があるときは,不動産所得の計算上は,当該期間や配当日などにかかわらず,受託者が支払を受けるべき日に受益者について不動産所得が発生したとする.

ふむふむ,と筋は追えるのだけれど,考えてみると一部変な結果にもなりそうだ.利益が出るような収益受益権の譲渡は(元本受益権の譲渡に比べて)税務上不利になる.また,収益受益権を適正な価格で購入した場合,信託期間の終了とともにその価値はゼロとなってしまい,その損失を他の所得と通算するのが難しそう.信託期間中毎年発生する不動産所得にはきっちり課税されるのに.収益受益権をさらに収益の発生する年ごとに分けて,たとえば10年目に発生する収益のみを受けることができる権利,なんていうのを作成したとすれば,その不合理性が際立ってくる.

別の本で読んだ話.収入のある親は子を扶養する義務があるので,離婚などの場合,いわゆる養育費を子に支払うこととなる.将来の収入も,生活費や学費の必要額も,ともに不確定だから,通常は定期的に支払い,事情に応じて増減することになるのだと思う.

でも,長期にわたって支払を受けられるか不安だとか,いまは金銭的に余裕があるけれど将来事業に失敗すると支払えなくなるかもしれず不安だとか,そういった場合に,例外的に一時金で支払いたいというニーズがある場合もあり,そういったときにまとまった金銭を信託して元本および収益が定期的に支払われるようにするという事例があるのだという(国税庁から養育費負担者の扶養控除の対象となる要件に関する質疑事例も出ている).

これは,一時金を渡してしまうと管理の失当により将来の生活・教育に不安があるという事情もあったのかもしれない.信託の仕組みを使わないと,贈与税の課税対象となるのかもしれない.

でも,離婚の場合,財産分与(こちらは一時払いが通常だし,それで贈与税が課税されることはない……ただし,譲渡所得税には注意)を行うことも考え合わせると,この事例は片方の親が相当裕福な人だったから成立したのだと思う.そんな余裕のない一般人の場合,どうするか.私が信託会社のセールスなら,自宅を信託財産とし,養育費部分の受益者を子,残余の部分の受益者を委託者とする信託のスキームを提案してみたくなるかもしれない.住宅ローンの返済途中でもさほど問題はないのではないかと.

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■2006/ 8/ 1(月)  夏休みにつき

大手町から半蔵門線で3つ目の,隅田川を渡ったところの清澄白河駅で下車して清澄庭園へ.大名庭園と共通する様式の庭園で,広い池の周りを巡りながら景観の変化を味わう(写真 1).戦前に財閥の岩崎家が取り寄せたという名石が多数用いられているのも興をひく.


写真 1

特徴的なのは,池の岸に飛び石を配していて,岸から少し離れた水上からも風景を眺めたり,鯉を中心とした魚類を鑑賞して楽しむことができるということ.この飛び石自体にも鑑賞の対象となり得る石を使用しているのが贅沢である.「磯渡り」と命名されているように,東京にいながらにして磯歩きをしている気分になれる.日本庭園といえば,大人の楽しむものだと思っていたけれど,ここは小さい子供も十二分に楽しめそうだ.

早稲田の JEI 事務所に久しぶりに顔を出し,『エスペラント日本語辞典』を購入.聞きしにまさる力作である.今後,この言語の学習者にとって必携の辞典となるのだと思う.

夕食は,ご飯,生卵,にんじんのきんぴら(ごま・唐辛子粉入り),トマト,白菜浅漬け,食後にキウイ.こう書くと,一見粗食に思えるかもだけれど,栄養バランスをとりつつ自分の嗜好に合わせつつ冷蔵庫を片づけつつ,というのをうまく達成した感じ.

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