伊勢原の事件で逮捕された被疑者が昨年YouTubeに投稿していた動画が一部で話題になっていた．
一例として，Twitterでは，2012年7月28日付で@kakiserlsax氏が「人間と人間が話し合っている映像は、言語学的素養が一切なくても、本能的に「人間の使用に耐える完成度の言語」と認識させられるね。」と述べていた．なおこの動画について魔法堂ルシアンサイト（現在は閉鎖）では，「全編芸術言語で綴られた世界初の短編映画です。 人工言語アルカで全て会話がなされています。」と宣伝している．
芸術言語といえばトールキンの作成した言語などが著名ながら，私は知見がないのだけれど，一般に言語というのは多かれ少なかれ人工的に作られたものであり，一部には駄作言語もあるけれど，いままで伝えられてきた言語の多くは日常会話や文学的創作に耐えうる水準のものなので，その知見をベースにすれば，完成度の高い言語を作成することは可能なもので，その実例も多い．
また，その言語を知らない人にとって意味の把握が困難だというのは，言語一般についていえることで，例えば中国語の普通話を知っている人が広東話の会話を聞いたとき，1割程度は理解できるとか，ドイツ語の知識がある人がアイスランド語の放送を聴いたときに少し理解できるとかいうことはあるとしても，例えばマルタ語で平易な語彙のみを用いて話された場合に，欧州語の知識のみでは全く理解できないと想像できる．
同一系統に属する言語の中でも，沖縄の方言などは，平易な語彙のみを用いて話された場合には，本土の方言の知識だけでは理解が困難かと．
一点，話者の属性によって指示代詞や人称代詞の形が変わるというのは，他の言語にあまり例が見られないかもしれないけれど，話者と相手との関係性によって2人称代名詞の形が変わる例は例えばフランス語・ロシア語に見られるし，日本語（特に標準語において顕著）では，話者の属性によって終助詞などの文末表現が激しく変わり，英語話者には習得が困難である模様だったり，大衆文化においては作品ごとに文末表現を新たに創作する例があるぐらいなので，日本人の手になる言語としては十分納得のいくものではないかと．
今国会に提出されている共通番号制度（「マイナンバー」）の法案が今国会で成立すると，2016年1月から同制度の利用が開始される．
これに伴い，住基カードの発行が終了する（発行済みの住基カードは，引っ越さない限り有効期限内は継続使用できる模様．参照: 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案20条1項）．
住基カードには住所氏名生年月日性別の4情報が記載されているほか，顔写真を表示してもらうことができ（顔写真つき住基カードと呼ばれる），私はこの発行を受けて，役所や銀行窓口，その他民間の各種申込み（携帯電話の契約など）での本人確認のための書類として結構便利に使っていたのだけれど．
マイナンバー制度の開始に伴い，住民（日本に居住している日本人と中長期在留外国人）には，まず個人番号を記載した「通知カード」が配布される．そして，希望者（将来的にはほぼ住民全員を想定？）には，これと引き換えに「個人番号カード」が交付される．
この「個人番号カード」には顔写真も付いていることから，同様に本人確認書類として使えないかと思ったのだけれど，一つ落とし穴があった．
「個人番号カード」の券面上には，住基カードと異なり，「個人番号」が記載されているのだった．
「個人番号」は，賃金の源泉徴収のため勤務先へ届け出るほか，銀行，証券会社，年金関係など，税・社会保障関連の多くの手続で相手方に告知する必要があるので，この番号が税・社会保障以外の手続で相手方に見える状態にすると，この番号を悪用したなりすましや情報集約が生じる（本来秘密情報として管理すべき個人番号が危殆化してしまう）ことが懸念される．もちろん個人番号は，秘密鍵のように絶対に他人に渡らないよう管理すべき性質のものではないけれど，クレジットカード番号と同等の注意を払って管理する必要はあると認識している．
現に米国ではSSN（社会保障番号）を悪用したなりすまし被害が多発しているほか，韓国でも住民登録番号の悪用が発生しているという（そのため，新しい住民登録証には住民登録番号を記載しないようになったという）．
クレジットカード番号は，万一不正利用されれば，多少の不便は伴うが変更が可能（というより変更を求められる）だけれど，個人番号はそうではない模様．
それを考えると，住基カードの発行終了後は，本人確認書類としては当面は健康保険証と他の何か写真付きのものを合わせて使うか，旅券（旅券番号によってひも付けされる情報はほぼ存在しないし，5年か10年ごとに更新すると旅券番号が変わる）を使うというのが対処策になるのだろうかと思う．
なお，個人番号カードの発行を受けないでよいかというと，私の場合は国税電子申告（e-Tax）のためにやはり発行を受ける必要がありそう．