みしっく今日のひとこと - 2010年9月


■2010/ 9/24(金)  解雇規制の撤廃論議に思う.

ホワイトカラーエクゼンプションの導入が反対にあって頓挫すると,財界系の一部メディアでは,今度は「解雇規制を撤廃せよ」という主張が見られるようになった.そうすることで失業率が下がるだろうとか,非正規雇用の労働条件が向上するだろうという.

期間の定めのない契約においては,一方の契約当事者から相手方に対して解約告知をすると,相当の期間の経過後に契約による債権債務関係が将来に向かって消滅するというのが本来の姿ではある.労働契約においてもこの原則を貫徹するというのは,確かに筋が通っている.しかし,整理解雇についてはともかく,解雇一般について規制を撤廃すると,どのような世界になるのだろうか.

その答えは,米国にある.米国では,以下に示す通り,男女差別や年齢差別などに該当しない限り,解雇が原則として自由に行える.

独立行政法人 労働政策研究・研修機構 編 労働政策研究報告書 No. 39『「諸外国の労働契約法制に関する調査研究」報告書 第4章 アメリカ』,2005年 を見てみると,この国では制定法によって規制されている労働関係事項(採用,試用期間,就業規則,労働条件の変更,配置転換,出向,転籍,懲戒,解雇等雇用契約の終了など)がごく一部であり,また,民間企業の労働組合組織率は約9%であるため労働協約による規律は弱いので,結局これらの事項の規定は個別の雇用契約に委ねられている.そして,ほとんどの個別の雇用契約は「随意雇用原則」(at-will employment doctrine)に従い,有期雇用は例外的であるという.すなわち期間の定めのない雇用契約において被用者は「いかなる理由によっても,あるいは何らの理由なくして解雇されうる」ということである.

「契約関係がat-willであるゆえに一方当事者からいついかなる理由によっても将来に向けて当該契約関係を解消することができる,すなわち両当事者共に雇用関係の継続性(被用者にとっては雇用保障)を担保する法的根拠ないし規範が存在しないことから,日本におけるほど雇用契約法的規制は目覚ましくは発展していない。また仮に,at-will雇用契約上,被用者が何らかの権利を有するとしても,at-willに基づいて使用者がいついかなる理由によっても被用者を解雇しうる以上,権利を有することの意味は非常に小さい。」と報告書は述べている.

理由なしの解雇が認められるなら,長時間労働の強制,休暇の付与拒否,賃金の引下げ,懲戒処分などにつき,企業側に文字通りのフリーハンドが与えられることになる.たとえ健康を害するような長時間労働を拒む権利,家族の養育や自己の療養のために休暇を得る権利,賃金を正当な理由なく引き下げられない権利,不当な懲戒処分を受けない権利を被用者が有しているとしても,いついかなる理由によっても解雇されうるというのだから,これらの権利を行使したことが解雇に結びつくことは容易に想定できるので,これらの権利の行使はほぼ不可能になってしまう.

私なりに言い換えると,江戸時代の商家と奉公人の間の主従関係のように,既往の労働に対して賃金を支払うことが雇い主に義務づけられているほかは,雇用の継続と労働条件の変更を含め,労働条件のほとんどすべてが雇い主の裁量に任されるという,著しく非対称な関係になるのだといえよう.

これが私たちの望む世界なのだろうか.仮に(解雇規制撤廃により)本当に失業率が下がるのだとしても.

次に,整理解雇について,規制の緩和が必要かどうか.

いわく,整理解雇は判例上のいわゆる「整理解雇の四要件」を備えなければなしえないとされるので,日本の企業は(いざというときに容易に整理解雇できないため)正社員の採用をためらうと主張される.すなわち,人員整理の必要性,解雇回避努力義務の履行,被解雇者選定の合理性,手続の妥当性が求められ,これが高いハードルとなるという.しかし,最近の裁判例を見てみると,これら四要件を満たさなくても整理解雇の有効性が認められた事例もあるようだ.法律に明文の規定があるものではないので,社会情勢に応じて要件の変遷はありえること.個別労働紛争解決制度も定着しており,現時点で制度上の手当をする必要は薄いのではないかと思う.

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■2010/ 9/20(月)  エアコンの天吊室外機の故障対応

我が家唯一のエアコンが故障して,家電量販店経由でメーカーに対応を依頼.大変混み合っているようで,1週間待ちとなった.

18日午後にエンジニアさんが現れて,症状から見た故障被疑箇所の説明を受けて,さっそく作業を始めてもらうことに.

脚立からベランダの手すりに乗り移って,手すりを足場代わりに利用して作業を始めたので,「『1メートルは一命取る』と言いますから気をつけてくださいね」と声をかけた.

作業の様子を見ていて思うに,室外機の天吊は空間の有効活用という点ではよいものの,保守性に難がある模様.聞いてみると,特に天井と室外機上部の間の隙間がわずかしかない場合は作業が困難という話.うちは1階なのでまだよかったものの,2階以上なら安全面から2人体制で来ることになるとのこと.それでも,もともとベランダの手すりは足場として使うようには作られていない(表面が滑りやすいし,かまぼこ形になっている)ので,安全帯なしでベランダの手すりに乗るというのは危険きわまりない.上の階の住人に事情を話して,上の階のベランダの手すりにフックをかけさせてもらって,安全帯をロープで結ぶか……でも最上階の作業時には,屋上には立ち入れないし,仮に立ち入れても支点になるようなものがなさそうだから,どうするのだろうか……などといろいろ思いを巡らせた.

次にエアコンを買うときは,ベランダ床置きにしようと思った.

故障原因については,対応依頼時の電話での問診でも,室外機の制御基板の故障が疑われたのだけれど,切り分けの結果,基板には特に異常は見られず,膨張弁の動作に何らかの不良があったということで,当該部品を交換して正常動作を確認し,作業終了となった.

子どものころ図鑑か何かで仕入れた知識では,室外機の圧縮機を出た冷媒を凝縮器で外気との熱交換を行うことにより冷却し,次に毛細管というものを通すことにより(断熱)膨張させて,低温低圧になった冷媒を室内機に導くという仕組みだと認識していたのだけれど,調べてみると,最近は効率向上のため,毛細管に代えて,制御ができる膨張弁という部品を使うのが一般的である模様.膨張弁は小さな部品ながら,基板と電気的に接続されていて,開度を調節するためのステッピングモータや制御用ICが組み込まれているようだ.

蛇足ながら,今回来られたエンジニアさんは,エアコンやテレビの修理のほかに,サーバやRDBMSの技術も持っていて,そちらの仕事もしているのだと問わず語りに話してくれた.夜勤の保守の仕事などはされるのですか,と水を向けてみたところ,以前は夜勤のある仕事もしていたのだけれど,身体に負担が大きいのでいまは昼間の仕事に絞っているのだという.エアコンの修理ができてDBの設計ができるというのは稀有な人材なのではないかと.

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■2010/ 9/18(土)  自動改札機にきっぷを食べられてしまった場合の対応.

2か月前の話なのですが.

改札機に間違ったきっぷを入れたなどで,扉をばたんと閉められてしまうことは時折あるものの,改札機にきっぷを食べられてしまうというのは,私は経験がない.地下鉄などで改札機の蓋を開けてきっぷを取り出している駅員さんを目にしたことがあるので,きっと改札機からきっぷが出てこなくなったらそうしてもらうものだと思っていた.

ところが,数名で旅行をしていたところ,一人がとあるJRの駅で改札機にきっぷを入れたら,出てこなくなってしまった.みどりの窓口も設置されている有人駅だけれど,早朝とあって係員は不在だった.有人駅には必ず係員が泊まり込んでいて,終電時の旅客案内,終電・初電に合わせた駅のシャッターの開け閉めや乗り越し客などからの運賃の収受をしているものだと思っていたのだけれど,認識が違っていた模様.

よくしたもので,改札機の画面には「インターホンで係員に連絡してください」と表示され,通路の端にインターホンが設置されているので,それを使って状況を申し出たところ,新幹線への乗換駅まで行って,そこのみどりの窓口で状況を説明するようにとのこと.

新幹線への乗換駅で経緯を申し出たところ,磁気券ではない紙に手書きで原券の内容と原券の通り旅行させるよう関係係員に依頼する旨の文言が記載された書面(業務連絡票というらしい)を作成していただいて,無事旅行を続けることができた.知人とは途中で別れたものの,たぶんその後の乗換駅で業務連絡書を提示,下車駅で回収といった扱いになったのではないかと思う.

細かい話だけれど,ネットで検索してみると「業務連絡書」という名前の書面を渡されることが圧倒的に多い模様.一方で,今回のように「業務連絡票」を渡されたという事例もうつ病闘病記〜支援編〜 - 特急列車でのトラブルに見られるようにいくつか存在する.支社などによって異なっているのかもしれない.

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■2010/ 9/14(火)  木馬の時間

歌人の俵万智氏が「木馬の時間」というタイトルの随筆を東京新聞に連載している.

著者は仙台在住で,5歳のお子さんとの二人暮らしという(金沢育ちだと思っていたが,Wikipediaによれば福井県武生市育ちである由).この連載では,子どもの発達,とりわけ言葉や社会的スキルに関することを温かくきめ細かくとらえていて,読んでいて心あたたまる思いがする.楽天イーグルスのホームスタジアムである仙台の野球場に二人で行きました,といったエピソードなども興味深く読んだ.

なおタイトルは,著者作の「揺れながら前へ進まず子育てはおまえがくれた木馬の時間」という一首に由来する模様.短歌のよさを味わうのは不得手だし,そのよしあしを論じるのは全く無理だけれど,「納豆は『なんのう』海苔は『のい』となり言葉の新芽すんすん伸びる」(同)といった歌には共感するところがある.

蛇足ながら,仙台といえば,正岡子規が榴岡公園を訪れたことを「はて知らずの記」に記している.「二十九日つゝじが岡に遊ぶ。躑躅岡とも書き山榴岡とも書きて 古歌の名所なり。仙台停車揚のうしろの方にあたれり。」とある.

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■2010/ 9/12(日)  職住近接への憧れ

自転車で少し行ったところに製紙会社の工場があって,その隣に同じ企業の社宅がある.5階建てほどだったろうか,柱と柱の間のスパンが長くて採光のよさそうな住戸が続き,外壁は明るいクリーム色に塗られている.ベランダは住戸ごとに付けた凸形の膨らみがアクセントになっていて,ところどころにはCS放送受信用の小さいパラボラアンテナも設置されている.棟と棟の間の道路を昼下がりに散策してみると,兄が弟を乗せた三輪車を舵取り棒で後ろから押してやって,父が近くで見守る姿が見える.

どこかの窓からは,ベートーベンのエコセーズ(WoO 83の方.IMSLPのページヤマハのページ)を練習しているピアノの音が響く.私の住んでいる地域の町内会の管理している掲示板は,「○○様 金一封」などと,地元の旧家(?)からの寄付を受けた旨が墨黒々と記されていたり,在来宗教の宣伝のようなのが貼られていたりと,田舎っぽいのに,この社宅では,歩道脇の掲示板の掲示物もどこかあか抜けている感じがする.

都心からの距離は多少あるけれど,職場まで歩いて数分.絵に描いたような幸せそうな住環境を職住近接で手に入れられるというのは,さすが大企業だと,憧れと羨望を抱いてしまった.

社宅という制度がいいものかどうか私は懐疑的だけれど,子育て世代を含む,できるだけ多くの人たちに,住まいに関して苦労したり将来の不安を持ったりせずにすむ環境を提供するというのは,いまの社会でははなはだ不十分なことで,取り組みを強める必要性を再認識したのだった.

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■2010/ 9/11(土)  BSEって….

EN L'HONNEUR DE LA BSE VIERGE MARIE ...という表記を見かけた.BSEって何だろう,と思って検索してみても,狂牛病の話がヒットするばかりでなかなか見つからない.おおかた何かの敬称の略だろうと目星はつけたのだけれど.

で,いくばくか格闘した後に,やっと解読.

Bienheureuseの略だったんですね(参考: Wikipediaの関連項目).

この局面で,日本語ではこれに対応する語はまず使われないだろうと思った.

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■2010/ 9/ 5(日)  登記のない法人

行方不明高齢者問題が表面化してしばらくになりますが….

法人が不動産の登記をしたり,訴えたり訴えられたりする際には,資格証明書と呼ばれる書類が必要になる.自然人の場合にはこれに当たるものは原則として必要ない.

この資格証明書というのは,登記所で発行してもらうものだけれど,法人というのは,すべからく登記されているものだろうか.

もちろん会社や一般社団法人などは登記されているし,生協などのその他の法人,果ては国立大学法人に至るまで,何らかの法令に基づき登記が行われている(組合等登記令,弁護士会登記令,独立行政法人等登記令など).これは,ある法人が本当に存在すること,取引の相手方が真実その法人を代表する権限があることなどを誰でも知ることができるようにする制度だ.

登記されていない法人として直ちに思いつくのが,国や地方公共団体.これらは存在は周知のところだし,官報や公報に代表者の変動を掲載しているので,登記する必要が感じられない.

日本法で認められている法人というと,外国やその行政区画などもあるけれど,外国関連はここでは割愛.外国会社も日本で営業活動を行うときは日本で登記される.外国の非営利法人は日本では認許されていない(法人として扱われない).

民法をかじったことのある人は,「相続人がないとき等の相続財産」も登記されない法人の一つだと思いつくかもしれない.そうだけれど,この法人が不動産登記をしたり,訴訟に関与したりする際の手続は民法自体に規定されている(952条等)ので,あまり問題はなさそう.

私たちの生活に密着している法人のうちで,登記がないものというと,健康保険組合や厚生年金基金が代表格か.健康保険組合を第三債務者として債権の(仮)差押えをするときにも資格証明書に当たるものが必要になるそう.それで,こうしたときは所管官庁の長から証明書の発行を受けて用いるらしい,と千代田区九段の司法書士のブログを読んで知った.これ以外にもこういった登記のない法人がいくつかあるらしい.

レアなケースとしては,清算結了の登記がなされた会社に,清算漏れの財産が残っていた場合とか,戦前に設立された法人で,外地に本店があるものとかがあるのかもしれない.

焼き魚などに酸味と風味を添えたいときに,すだちなどの柑橘類を用いる.

こういった用途の場合,1回当たりの使用量が少ないので,果実の大きさが小さい種類の柑橘類が適するという考えから,うちではもっぱらすだちを使っていたのだけれど,最近,生さんまが出回るようになったのと同時期に,青いシークヮーサーが店頭に並ぶようになった.値段がとても手ごろなので,絞り汁をコップに入れて,水を加えて味見してみたり.

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