式根島写真集


6月13日

写真 3
写真 2
写真 1

夜になって家を出て,二子玉川・大井町で乗り換え浜松町,竹芝桟橋へ.日曜便ながら待合所は意外にも釣り人,島民を中心とする乗船客で賑わっており,2等和室など一部のクラスではすでに満席の表示が出ていた.今日は大島方面へかめりあ丸(写真 1),八丈島方面へさるびあ丸(写真 2)が出航の予定で,事前に予約して発券を受けていたクーポンを窓口で差し出し,乗船券を手にする.21時40分から乗船開始となり,さっそく乗船し,予約してあった1等船室(写真 3)を確認して船内を歩き回る.フェリーではなくやや小型の船で,大浴場や食堂は備えていない.

出港5分前はドラの音の放送で知らされ,やがてゆっくりと船体が岸壁を離れる.レインボーブリッジをくぐって,羽田沖に到着,時間調整のため0時ごろまで停泊する.

6月14日

写真 6
写真 5
写真 4

大島は岡田港に5時57分入港し,20分間停泊.7時40分利島,8時35分新島(写真 4)に入港した後,9時に式根島野伏港で下船し,神津島を目指すかめりあ丸を見送る.予約してある民宿に荷物を置き,さっそく島内を散策することとする.目抜き通りを歩くと,人口600人ほどの島にしては商店が多いことに気づく.保育園,小学校,中学校(写真 5.おそらく島でもっとも大きな建物),郵便局,信用組合,平屋の NTT 東日本ビル(窓口はない)もある.郵便ポストは少ないが公衆電話が多い.開島百年記念碑,同五十年記念碑,まいまいず井戸(写真 6)を見て回る.

写真 9
写真 8
写真 7

式根島は2か所の海中温泉で名高い.与謝野晶子文学碑,式根島港の脇を通って,そのうち1か所の足付温泉(写真 7)へ.更衣室で水着に着替えて入浴する.海辺は磯になっており,湧出地点は底の石が赤褐色に変色していて水面に泡が浮かんでいるのでたやすく見つけることができる(写真 8).湯が適度に海水と混ざって適温になっている場所を探して入る.近くに松が下雅湯と名づけられた露天風呂(写真 9)があり,こちらは源泉から温泉を引いているもので,やはり水着を着て入る.

写真 12
写真 11
写真 10

時分時につき通りに戻って食事をとり,宿に戻って休み,夕方に出かける.まずは野伏港へ.じっくりと釣り糸を垂れる人数人を除いては人影もない.新島との間に1日3往復の連絡船が出ている.続いて高森灯台へ.昭和初期,航海の安全を願って築いた灯台の跡であるらしい.灯台が立地するくらいだから,眺めがすばらしい.新島はもちろん,地内島,利島,大島とおぼしき島影まで(写真 10写真 11).テングタケ?(写真 12)が群生していた.

6月15日

写真 14
写真 16
写真 13
写真 15

7時に朝食.式根島は小笠原と異なり,動植物相は本州とほとんど同じで,驚くようなことはない.本州と違うのは,針葉樹が植林されていないことで,椿の植林も見当たらず,広葉樹を中心とする林が広がり,尾根のような環境の厳しいところには松が並ぶので,芭蕉が「島々や千々に砕きて夏の海」という句を作った松島とはこのような場所なのだろうかと思わせるような景観である.

島の西半分の海岸沿いに作られた遊歩道を回って島を半周する.大浦(写真 13),中ノ浦(写真 14),神引展望台.中ノ浦はことのほか景観が美しく,白砂のビーチとエメラルドグリーンの海の対比も見事だ.神引は島の最高地点で,360°が見渡せる(写真 15写真 16).新島をはじめ,利島,地内島,早島,三宅島.三宅島は大層大きい島なのだと気づく.

写真 19
写真 18
写真 17

続いては,唐人津城,隈の井(写真 17),御釜湾,浜津城といずれも絶景揃いである.きのこはテングタケが多いほか,写真 18写真 19,ベニタケの仲間の黄色いのと赤いのを見つけた.島全体が広葉樹林なので,秋には期待できそうだ.

写真 22
写真 23
写真 21
写真 20

集落へ戻ると,「湯加減の穴」なる場所が路傍ののり面に設けてある(写真 20).手を差し込むともわっと温かく,これで温度を確かめてから温泉に入るのだという.いったん食事をとってから地鉈温泉へ(写真 21写真 22写真 23).こちらは足付温泉と異なり,20世紀初頭に伊豆の石工が温泉までのルートを開いたのだという.水着着用.一人で入るには贅沢なお湯の量で,湯と海水を混ぜるための湯壷もいくつもあって入りやすいものの,底の石の全面に淡水性の藻が付着しているのには戸惑う.「温泉憩いの家」はこの近くでくみ上げたお湯を引いている.

6月16日

写真 25
写真 24

再び高森灯台跡へ.どうもカラスがうるさく落ち着けないので,海岸沿いをさらに南東に歩き,小浜漁港を過ぎてこのくち展望台へ(写真 24写真 25).この展望台はアスレチックフィールドを併設していて,いくつかの遊具が芝生の園地に設置されている.対岸の新島の白い砂浜と,式根島の野趣あふれる景観の対比を愛でる.ときどき漁船が行き交い,飛行機が頭上を過ぎる.通りがかる人はまれである.

野伏港に最も近い入り江である泊浦へ.島に人が定住する以前から船の風待ちなどに用いられていたということで,岬と岬の間を半円形に結ぶ白い砂浜が美しい海水浴場だ.水の透明度が高い上に遠浅なので,湾内の水底がすべて見渡せる.道路沿いに設置されているトイレにはシャワーが設置されている.他の海水浴場にはシャワーを備えないものもある模様.これで島の周囲(全周 12km)のほぼすべてを回ったことになる.

この島は父島に比べて人口が少ないものの,焼き立てパンと手作り弁当を並べる池村商店をはじめ,食料品を扱う商店が4軒ほどもあり,みやげ物店はさらに充実しているようだ.反面,シーズンオフだからか,郷土料理を出す店は休業中だった.

写真 28
写真 27
写真 26

野伏港に戻り,船客待合所でしばらく休憩して桟橋(写真 26)へ.やがてジェットフォイルが到着する(写真 27).総2階建てで,シート配列は2階が2-5-2,1階は3-6-3と,飛行機に比べてかなり横幅が広い.15時10分出航.停泊中はかなり揺れるものの,航行中はそのようなことはなく,ほどなく新島に到着する.15分ほどで出航し,しばらくして利島(写真 28)へ.切り立ったがけに囲まれた険しい島である.椿油生産量日本一だそうだ.利島での停泊時間は短く,すぐに出航となった.

写真 30
写真 29

船は 70km/h 超の速度で太平洋上を快走し,16時15分ごろ大島元町港に到着.しばらく上陸して付近を見て回る(写真 29).かなり繁盛している観光地の駅前といった雰囲気で,大きな船客待合所は観光客でごった返している.東京への船便は私の乗っている便のすぐ後にもう一便あり,それが最終だとのこと.伊東・熱海行き高速船シーガル(写真 30)は私の乗っているジェットフォイルからの乗り継ぎも可能だ.やがて乗船を開始したジェットフォイルに乗り込む.16時40分出航の後は一路東京を目指す.1時間45分ほどで夕暮れの竹芝桟橋に到着し,旅を終えた.