2000年秋ソウル旅行記

◎ほーむ


2000年9月20日から23日までの間,研究室のソウル旅行に参加した. 私にとっては3度目の訪韓となる.


■20日

関西空港からソウル金浦空港へ. 関西空港までは,京都市バス,京阪,京橋乗り換えで JR 関空快速を利用してみた.JR 特急〔はるか〕を利用した場合に比べても自宅からの所要時間はあまり変わらないし, 安価なので,元気なときにはこれがいちばんいいようだ.

2時間足らずのフライトで金浦空港に到着.利用した航空会社は,大韓航空. 事故が頻発しているため昨年4月には大統領にまで批判されたという, 問題航空会社だが,幸いにも着陸まで事故は起こらなかった. 今回は韓国の携帯電話を借りようと思って SK テレコムの空港窓口に行ってみたところ, 端末が全部借り出されているので無理とのこと.そこで,016 で始まる電話番号の PCS(日本でいう PHS)を借りることにした.基本料金は2万ウォン(23日現在, 1ウォンは約0.105円)プラス1日当たり4,000ウォンだが, 大韓航空の搭乗券半券を渡すことで2万ウォンの割引が受けられる. 国内のみ利用可能な端末の通話料は1分当たり400ウォン.

今回泊まるホテルは松坡(ソンパ)区蚕室(チャムシル)のホテルロッテワールドなので,韓国人留学生 Y さんの立てたプランにしたがい,地下鉄で汝矣(ヨイ)ナルまで行き, そこで蚕室行きの漢江遊覧船(ハンガンユラムソン)に乗ることにした.ところが, 汝矣ナル船着場(ソンチャクチャン)に行ったところ,16時の船が出た後,次の船は19時だという. バスを探したが,見つからず,時間もないのでタクシーに分乗することにした. 模範タクシーではない普通のタクシーで,ホテルまで10,300ウォン. 日本だったら3,000円くらいかかりそうな距離.

なぜか内装にピンクが多用してある不思議なホテル. チェックインし,荷物を部屋に置いて,さっそく夕食へ. 瑞草(ソチョ)区瑞草洞,国立国楽院向かいにある,「ノルブジプ」という伝統家庭料理の店. 地下鉄駅からちょっと離れた場所に位置するので,タクシーに分乗. 土俗酒場,民俗酒場と呼ばれるお店を思いっきり大きくしたようなお店で, 内装は伝統的なオンドル部屋のそれになっている. 大きな店だが,地元の人ばかりで,日本人観光客はほとんど見られない. 料理はたくさんの皿に載っていて,机ごと運ばれてくる. チョギ(イシモチ),ケンニプ(ごまの葉っぱ)など, 韓国料理ならではの食材も使われていて,なかなかよい.ただ, 韓国にしてはそれほど辛くない料理だが, やはり日本人にはちょっと辛すぎるようだった. 甘みとさわやかな酸味がマッチしているトンドン酒(韓国版どぶろく)は好評だった.

夕食後,国立国楽院ウミョン堂で19時半から開かれる,ケウォン芸術高校の発表会を観覧. カヤグム(琴の一種)の演奏,サムルノリ(打楽器を用いる農楽の一種), パンソリ(語り物に節をつけて歌う民俗芸能), カンガンスルレ(全羅南道地方の伝統的な踊り)など,韓国の伝統芸術が演じられた. パンソリはお約束の春香伝の一節が演じられたが, 李夢竜(男性)と春香(女性)が互いに下称(ヘラ体)と中称(ハオ体)を使いあっていたのが印象的だった. 李夢竜は下称を,春香は中称を.いまだったら絶対,略待か略待上称のはずだ.

タクシーに分乗してホテルに帰ろうとしたが,1台しか拾えなかったので, 私たちはマウルポス(ローカルバス)で地下鉄南部ターミナル駅まで行き, そこから地下鉄でホテルへ.蚕室駅の売店で,Y さんが好物のバナナ牛乳(ピングレの, 風変わりな形のパッケージの)をおいしそうに飲むのを見て, 私も試しに買って飲んでみたのだけれど,甘ったるくて変な味だった.

研究室の I 先生は,私ほどではないかもしれないけれど, 大事なときに忘れものをすることが多いので有名な先生.前回のボストンでは,ノート PC を液晶プロジェクタにつなぐアダプタを忘れてしまい,visualization なしのプレゼンになったという.今回はそのアダプタは大丈夫だったのだが,AC アダプタを置いてきてしまった.幸い,Y さんの持ってきていたノート PC が使えたので,プレゼンはそちらですることになった.


■21日

ここ松坡区は Y さんの地元なので,Y さんについていくことにして, 9時40分ごろ,遅めの朝食をヘジャンクク(辛くないスープの一種)店でとった. ヘジャンククは食べたことがないし,血が入っているというので, 食べられるかちょっと不安だったが,血は入っていなくて全然普通でよかった.

秋葉原みたいなところに行ってみたいという H さんと意気投合して,二人で竜山電子商街(ヨンサンチョンジャサンガ)に行くことにした. 国鉄竜山駅の前に位置するこの街は,小さな電器店, パソコンショップが何百も立体的に集まっていて, ていねいに回ると意外とおもしろい.ここを訪れるのは2年ぶり. ハングルがキートップに刻印されているミニキーボードを買って,28,000ウォン. 安めの CD ショップもあり,そこで音楽 CD を4タイトル買って,46,500ウォン. 昼食は,私はカルグクス(うどんに似た食べ物),H さんはチャムチフェピビンパプ(ぶりの刺身の混ぜご飯).

この街はなぜかソフトを売っている店が少ない. 午前はハードの店を見て回ったので, 昼食後はソフトを集中的に探すことにした.「815」という Windows 用ゲームがあるのを発見し,5,000ウォンだったので買ってみた. 第2次世界大戦のゲームのようだ.H さんは,韓国語は全然読めないけれど, ゲーム雑誌を2冊も買っていた.

竜山駅の改札口は鏡張りのビルの3階にある.国鉄だけに, ホームがいくつもあって,どこで乗ればいいのか迷ってしまうけれど, 議政府はソウルの北にあるということがわかっていれば大丈夫だ. 議政府(ウィジョンブ)・清涼里(チョンニャンニ)方面の5番線で乗車すれば, 都心に行ける.

その後,梨大(イデ)前のケーキ・パンのお店,「Migo」でケーキを食べた. ここはソウルに行くといつも立ち寄るお店.繊細でほどよい甘さのケーキは, ぜいたくな日本人にも十分満足してもらえるものだ.地下鉄の駅から近いのもいい. 今回は二人で行ったので,4種類のケーキが味わえて,大満足だった:-)

地下鉄で蚕室に戻り,みんなと合流して,晩ご飯を食べようということになった. ロッテ百貨店11階のレストランでプルゴギ(味をつけた牛肉を専用の鉄鍋で焼いた料理)を食べた. ビールも入れて一人10,000ウォン強と,韓国にしてはちょっと高めの食事だったが, 「すき焼きみたい」「焼肉って感じがしない」と, あまり感想はかんばしくなかった.実は私もプルゴギを食べるのは初めてで, 正直いって,肉の味つけがどうも甘すぎて好きになれなかった.

食後,おみやげなど買い物.研究室の Y 先生は怪しい飲み物が好きなので, 「アチムヘッサル」(朝の日差し)という名前の「米飲料」のペットボトルを買っていくことにする. その他自分用のお茶など購入.

夜,KAIST(日本のないすとやじゃいすとのようなもの?)でのプレゼンから帰ってきた I 先生を囲んで,部屋でミニ酒盛り.ノックの音に「オディヌグセヨ?」(どちらさまですか)と冗談で聞いてみたら, 「ナヤ!」(私よ)と Y さん.本当はドアスコープで見て相手がだれかわかっていたけれど, いちおうもうひと押しと思って,「『ナ』ガヌグエヨ?」(「私」って?)と聞いてみたが, ただただ笑うばかりなので,しょうがないと思って,ドアを開けた. 「オディヌグセヨ?」というのは,本当はリスナー参加型ラジオ番組でリスナーに住所と名前をたずねるときの表現なのだけれど.

プルゴギがあまり焼肉っぽくなかったという話をしたら,Y さん,「プルゴギは焼肉じゃない(ぽつり).」と日本語でひとこと. 焼肉を食べたいと思ったら,カルビグイ(牛の骨付きカルビ焼き)を注文する必要があるらしい. 「ナヤ!」と,このセリフは,私の心にいたくヒットした.

I 先生はぷららの国際ローミングで部屋の電話からインターネットに接続を試みていた. メールの受信はうまくいくのだけれど,送信ができない, というので,慣れない Windows 環境だったけれど, ちょっとテストして設定を修正したらうまくいった.From: に設定するメールアドレス(envelope from に設定するアドレスでもある)が微妙に間違っていたため,Relay Operation Rejected エラーになっていたというもの.


■22日

早起きして,8時30分ロビー集合で宗廟(チョンミョ)へ. 朝食は昨日買っておいた調理パンとデニッシュ. デニッシュにはなぜか泡立てた生クリームが付いてきて, それを付けて食べるらしい.不思議な食べ方だ.

地下鉄で宗廟へ.李氏朝鮮歴代の王・王妃がまつってあるらしい. その後,昌慶宮(チャンギョングン)を見てから,タクシーで国立中央博物館へ. 国立中央博物館は景福宮(キョンボックン)前の旧朝鮮総督府にあったが, 旧総督府の取り壊し工事のため,移転している.

景福宮南東向かいの食堂,カヤランで昼食.私はスンドゥブ(おぼろ豆腐). スンドゥブがそのまま出てきて,つけ汁をつけて食べるのかと思ったら, 実はスンドゥブチゲ(スンドゥブ,卵,ねぎなどの入った辛い鍋料理)だったけれど, 豆腐は大好きなので,辛いのには目をつむって食べることにした. ほかにトッポッキ(餅の炒め物),キムパプ(のり巻),スンデ(米, 血などを詰めて蒸した腸詰め)をつまんだ.トッポッキは初めて食べたけれど, やはり口に合わなかった.同じく初体験のスンデは意外とおいしかった.

午後,景福宮,国立民俗博物館を観覧.どちらも充実していて楽しかった. ソウルに来る観光客はやはりまず景福宮を見るのがいいなあと.

タクシーに分乗して南大門市場(ナムデムンシジャン)へ. しばらく市場を見物した後,歩いて明洞聖堂(ミョンドンソンダン)へ. ミサ中で内部は観覧できず.韓国語のミサって,わけわからん. 韓国のカトリック新聞,カトリック的本などを買って,約12,000ウォン.

みやげもの店を見てから,明洞の栄養参鶏湯(ヨンヤンサムゲタン)で参鶏湯(鶏に朝鮮人参・もち米などを詰めて煮込んだ料理). 途中,Y さんの弟が加わる.私は20時10分ほどで抜けて,教保文庫(キョボムンゴ) に行った. この書店は,日本の東海銀行などの支店も入居している超高層ビル, 教保ビルの地下に位置する,ソウルで最大の書店だ. 21時の閉店まで20分ほどしか回れなかったけれど, ひとまず全国地図と料理本が買えた.

ホテルに帰館したところ,I 先生はまだお帰りでない.22時ごろ,昨日 I 先生のプレゼンを聞いたという人から何回か電話があったり部屋にたずねてこられたりして, 韓国語で応対したものの,なかなかしんどかった.自社の技術について I 先生にお会いしてご説明したいというのはわかるものの, もう夜だよ?という感じ.とりあえずロビーで待ってもらうことにして, いつごろまで待つのかと聞くと,「お帰りになるまでいつまででも. ただ,先生がお疲れのようならやめるが」というので, 「それなら常識的な時間,たとえば24時までということでどうか」と言ってみたりと, およそ普通の会話の教科書には出てこないような会話を交わしたので, いい勉強にはなったかもしれない.

結局,23時40分ごろ I 先生が帰ってこられて,ようやく無事解決. 先生はその後さらに3時間ほど喫茶店で話をされていたらしい…….


■23日

ピンクが多用してあり,「ムーディーな(笑)」(I 先生談)部屋に別れを告げて,9時発の KAL リムジンに乗車.他の旅客のいく人かは満員で積み残されてしまっていた. 40分ほどで空港に到着したので,地下鉄よりずっと速かったけれど,Y さんによれば,ラッシュで道が渋滞するともっと時間がかかるおそれがあるらしい. 空港では,全国紙の一つ,ハンギョレ新聞を買おうと思ったのだけれど, 空港の売店では置いてなくて買えなかった.

搭乗口を降りたところでバスに乗せられて,広い駐機場のまんなかまでつれていかれ, そこからタラップを上がってエアバス A300-600 に乗った.なんかフェリーに乗るときみたいだ. この機体は行きと同じ型だが,行きよりさらに古そうで,心配だったが, 何ともなくてほっとした.

関西空港で解散.JR 特急〔はるか〕で帰洛.


■旅行を終えて

大韓航空は,アシアナ航空に比べてスケジュールが日本からの客に有利なように設定してあり, 日系航空会社に比べて安価な点が魅力だが,命あってのものだねなので, 基本的に利用しないことにしている.今後も基本的には利用しないという方針を再確認したい.

ホテルロッテワールドは,日本の同クラスのホテルに比べればともかく‥ トリプルに泊まっても1泊一人当たり1万円以上と,割高だ. 空港からのアクセス,都心へのアクセスもよくないので,今後は基本的に利用しないことにした.

Migo のケーキはやっぱりおいしかった:-) また行こう.

あと行きたい場所は独立門広場かなあ.地図を買ったので, じっくり読みつついろいろおもしろそうな場所を探したい.

携帯電話は,借りたりするのがめんどうだし, 説明書がないのでなかなか使いこなせない.クレジットカードを提示した上, 金額欄白紙の明細票にサインさせられるというのもどうも困る. 頻繁に行くのなら,韓国でも使える携帯電話を持っていくのがいいと思う. そうでなければ,旅行中の人と連絡をとるには, 例によって日本の留守電にメッセージを入れあうという方法が安くて手軽で信頼性があってよさそうだ. 韓国の多くの公衆電話ではテレホンカードを使った国際電話が可能なので.